インターネットイニシアティブ(IIJ)は2017年1月28日、個人向けMVNOサービスに関するトークイベント「IIJmio meeting 14」を開催した。SIMロック解除や、au回線を用いたサービスでSIMフリー端末を利用する際の課題などについて解説した。

ユーザーの心理的ハードルも下がってきた

 MVNO事業部 MVNO事業統括室 担当課長 佐々木太志氏は、「SIMフリー端末ロックについて」と題し、国内の携帯電話やスマートフォンの歴史を踏まえ、SIMロックの動向について解説した。

IIJ MVNO事業部 MVNO事業統括室 担当課長の佐々木 太志氏
IIJ MVNO事業部 MVNO事業統括室 担当課長の佐々木 太志氏
(撮影:大類 賢一、以下同じ)
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 佐々木氏によると、SIMロックが顧客の囲い込み目的で広がっていると思われているが、導入経緯を振り返ると「当初はSIMロックするのが必然だった」と指摘する。1994年までは携帯電話は、キャリアからレンタルするものであり、ユーザーが購入するものではなかった。

 94年4月に携帯電話の販売が解禁されたが、契約情報は端末に直接書き込む方式だったため、SIMカードそのものが存在しなかった。第3世代携帯電話以降になって、契約情報を記録するSIMカードが登場。端末にSIMカードを装着して利用する方式が広がった。この段階で、他社の端末にSIMカードを装着することが可能になる。

 「NTTドコモの端末に他社のSIMカードを使っても、iモードが使えるわけではなかった。携帯各社のサービスに合わせて端末が作られているので、当時SIMロックを解除しても、ユーザーにメリットはなかった」と佐々木氏は指摘する。

 流れが大きく変わったのは、2007年に開催された総務省の有識者会議で、SIMロックの解除の促進が提示されたことだ、と佐々木氏いう。当時、LTEが普及する2010年にはSIMロックを原則解除とする法令化が議論されていた。しかし実際には、SIMロック解除は法令ではなく、ガイドラインに留まり、努力目標として現在に至る。

 「SIMカードが他社端末でも使えるようになると、顧客の流出が問題視され、SIMロック解除をキャリアが避けるようになる。今はむしろ顧客が他社に流れることよりも、販売奨励金や割賦債権の回収が問題視されている。現在のビジネスモデルを成立させるためにSIMロックが維持されてきた」(佐々木氏)。

SIMロックの持つ意味合いも、時代とともに変遷してきた
SIMロックの持つ意味合いも、時代とともに変遷してきた
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 「最近は、SIMロックを解除することへの心理的ハードルが低下している」と佐々木氏は見る。格安SIMの認知度も高まってきている、ユーザーがキャリアとの契約を解除する際にSIMロックに関する説明が必須になった。これらの変化によりSIMロックに対する意識が変わり、実際に2016年からSIMロック解除の利用件数が急増しているという。

 「今後は、プラスチックのSIMカードとは異なる、ICチップ型のeSIMが登場するだろう。ただちにSIMロックがなくなることはないだろうが、ハードルが下がっていくだろう」と、佐々木氏は分析する。