エヌビディアは2017年1月26日、企業向けVR(仮想現実)についてのイベント「NVIDIA Pro VR Day 2017」を開催し、VRの今後について、米エヌビディアで画像描画技術や触覚技術の責任者を務めるボブ・ペティー バイスプレジデントが講演した。

 画像処理技術の進化に加えて、音や光、触感の再現技術が向上したことで、製造業や建築、マーケティング、医療といった分野で新たなサービス展開が可能になるという。同氏は、「700億ドルの市場規模があるVRは、今後さまざまなビジネスを変える可能性がある」と述べた。

米エヌビディアのボブ・ペティー バイスプレジデント
米エヌビディアのボブ・ペティー バイスプレジデント
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 広く利用されているVRというと、ゴーグル型のヘッド・マウント・ディスプレー(HMD)を装着して、ゴーグル内に仮想の3次元映像を投影するもの。利用者の見る向きやコントローラーの動きに合わせて映像を動かすことで、仮想世界にいる感覚を体験できる。

 ペティー氏によれば、自動車販売店で車を買いたい消費者が自動車の映像を見て車種やデザインを検討したり、建設予定の高層ビルを映像で再現して景観や交通に与える影響を事前に評価したりといった用途で、利用が始まっているという。

 ただしVRの抱える代表的な課題として、「映像酔い」が挙げられる。人の動作と映像の動きにズレが生じることで酔いを感じてしまう。この映像酔いを防ぐには、映像を高速処理できて遅延が小さいGPU(画像処理プロセッサ)が欠かせない。

 ペティー氏は「映像酔いを防ぐにはこの時間差を20ミリ秒以下に抑える必要がある」といい、GPUの性能向上がVRの課題解決に貢献していると指摘した。さらに同氏は、音の方向や光の当たり方、触覚を正確に再現することで、より“本物らしい”実用的なVRの開発を目指すという。

 同氏は、映像に合わせて音を感じる方向を変えたり、光の当たり方を忠実に再現したりすると、より高いレベルの没入感が体験できるとする。例えば、建設業では建設する前の建物の設計をVRで再現することで、音の響き方や照明の配置を検討できる。これまでは簡単なシミュレーションに限られていたVRだが、正確な再現により試作を省いたり、設計期間を短縮したりできるようになる。

VRで屋内の日射量や照明を再現した様子
VRで屋内の日射量や照明を再現した様子
(出所:米エヌビディア)
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