中国政府でIT政策を所轄する中央省庁の工業・信息化部は2017年1月22日、インターネットサービス業務に関する通知を発表し、中国と海外とを結ぶ越境VPNを規制する方針を示した。中国政府はこれまでもインターネット上のコンテンツを検閲・遮断していたが、これまで安全とされてきたVPNにも規制の網がかかることで、中国に進出している日系企業やその従業員が新たな対応を迫られる可能性もある。

 越境VPNは、俗に「グレートファイアウオール」と呼ばれる、中国政府によるインターネットの検閲・遮断システムを回避する手段として使われている。VPNにより通信を暗号化することで当局が通信内容を検閲できなくなるため、中国国内のインターネットユーザーが中国政府にとって不利な海外メディアのニュースを閲覧したり、中国政府に対する不満を海外のSNSへ書き込んだりする際に使われてきた。

 今回の通知では、クラウドコンピューティングやビッグデータといった技術の発展に伴い、インターネットサービス関連の業務が飛躍的な発展を遂げた一方、「無秩序な発展の芽も現れている」と明記。インターネット接続事業者(ISP)やデータセンター事業者、コンテンツ配信ネットワーク(CDN)事業者などに存在する、無許可営業や越権営業、名義貸しなどの違法行為を法に基づき取り調べるとしている。この規制は2018年3月まで有効だ。

 VPN関連では、インターネットサービス企業に対し「電信主管部門の許可を得ずに、VPNを含む専用線を勝手に設置したり借りたりして越境サービスを展開してはならない」としている。また、国営通信会社が国際専用線を企業に貸し出す場合、利用企業の管理簿を作成するほか、利用企業に対しては自社内の業務目的を超えてVPNを使わないこと、中国内外のデータセンターやプラットフォームをつないで通信サービス業務を展開しないこと、などを求める内容となっている。

 今回の通知は、直接的には中国国内でインターネットサービスを展開している企業に対するもので、中国に進出している日系企業やその従業員が直接的な義務を負うものではない。とはいえ、現在利用中のVPNサービスが無許可のもので業務停止に追い込まれるなどすれば、現地法人の業務に影響が出る可能性もある。