全米ベンチャーキャピタル協会(NVCA)会長を務めるVenky Ganesan氏が、2017年1月18日に行われた「Draper Nexus B2B Summit in Tokyo 2017」(以下、B2B Summit2017)の基調講演に登壇、日本のベンチャー環境に向けたメッセージを送った。B2B Summit2017は、BtoB領域のオープンイノベーションを促すためのイベント。シリコンバレーからベンチャーキャピタリストやベンチャー企業のトップなどが多数来日、現地の最新ビジネス事情や最新技術などを報告したほか、ベンチャー企業との連携による成長を目指す大企業担当者らがそれぞれの取り組みを共有した。

写真1●全米ベンチャーキャピタル協会(NVCA)会長を務めるVenky Ganesan氏。シリコンバレーのVCであるMenlo VenturesのGeneral Partnerでもある。
写真1●全米ベンチャーキャピタル協会(NVCA)会長を務めるVenky Ganesan氏。シリコンバレーのVCであるMenlo VenturesのGeneral Partnerでもある。
撮影:寺尾 豊
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 同氏は、「日本には起業に向いた財産がたくさんある」とする。具体的には、理数系分野における教育水準の高さ、それをベースとした多くのノーベル賞受賞者、ソニーのウォークマンなど世界的なベストセラー商品、日本企業による特許取得数の多さである。

 しかし、現状をみると、大きな成功を収めているベンチャー企業が極めて少ない。日本企業の上位100社のうち、創業20年未満の会社は楽天だけである。一方の米国では、2016年の時価総額上位5社はApple、Alphabet(Google)、Microsoft、Amazon.com、Facebookであり、このうち3社が設立20年未満となっている。Uberなど、「ユニコーン」と呼ばれる時価総額が10億ドル以上の未上場企業の上位5社のうち4社は創業10年未満である。

 この違いの背景にあるのは、ベンチャー企業への出資額の違いだという。2015年時点で、米国でのベンチャーキャピタル(VC)出資額は770億ドルだったのに対し、日本は10億ドルしかない。実は、両者の違いは1990年代初めには4倍程度しかなかったのだが、今では75倍もの差になっている。

 これだけ差が開いた理由は、米国がVC投資を活性化するための施策を数多く投入し、ベンチャー企業を支える環境があるからだとGanesan氏は解説する。同氏は、「公的年金によるVCファンドを容易にする制度変更を行ったこと」「起業やキャピタルゲインを優遇した税制を設けてること」「シリコンバレーやボストン、ニューヨークなどの地域に、教育機関や弁護士、会計士、不動産の専門家がスタートアップを支援するエコシステムが出来上がったこと」「起業したての人に資金を提供するエンジェル投資家やシード投資家がいること」「コーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)の割合が、1995年の7.3%から2015年には21%となるなど、大企業も起業のエコシステムに貢献していること」「起業を促す文化的背景があること」の6つを挙げた。