負荷分散装置などのネットワーク製品を扱うF5ネットワークスジャパンは2017年1月19日、東京・赤坂の本社内にF5製品の検証センター「ジャパンテクノロジーセンター」を開設した。顧客企業や、システムインテグレーターをはじめとする販売パートナー会社の担当者に無料で公開し、評価やテスト、検証ができるようにした。

新センター設立について説明するF5ネットワークスジャパンのギド・フォスメア執行役員セールスエンジニアリング本部本部長
新センター設立について説明するF5ネットワークスジャパンのギド・フォスメア執行役員セールスエンジニアリング本部本部長
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 新しいセンターの特徴は、これまで米国シアトルにある本社拠点でしかできなかった負荷テストを実施できるようにしたこと。背景には、日本では顧客などから「負荷テストで得られるパフォーマンスデータを正確に把握したい」というニーズが強いことがある。

 そのニーズに応えるため、従来は米国拠点で実施する必要があった。「結果が出るまで数週間を要したが、国内での新センターの設立で、最短1日で結果が得られる」と、F5ネットワークスジャパンのギド・フォスメア執行役員セールスエンジニアリング本部本部長は説明する。

 検証できる製品は、負荷分散装置をはじめとするハードウエアや仮想アプライアンス。ハードウエアでは、2016年11月に発表した負荷分散装置の新シリーズ「BIG-IP iシリーズ」も検証可能だ。このシリーズの製品には、より強度を高めた「ECC暗号」を使った通信暗号化ができるSSLアクセラレーターなどを搭載している。

 「新たに搭載されたSSLアクセラレーターを、ストリーミング配信システムで利用する場合、ストリーミングサービスの利用者が違和感なく利用できるのかどうか」といったことを実機で確かめられる。またF5の製品には、Webアプリケーションを狙った攻撃を検知して防ぐWebアプリケーションファイアウォール(WAF)装置もある。「それまで使っていなかったWAFを機能させると、処理性能に影響が及ばないのかどうか」といったことも検証できる。

 これらの製品は、センター内に設けたサーバールームに設置。いつでも利用できるようにする。加えて、クライアント群や負荷分散対象のサーバー群を仮想的に構築して負荷テストなどを実施できるようにする環境を整える。

東京・赤坂の本社オフィスには、センター用のサーバールームも設置。F5の新旧製品などがすぐに使える状態にしている
東京・赤坂の本社オフィスには、センター用のサーバールームも設置。F5の新旧製品などがすぐに使える状態にしている
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 またF5の製品を組み込んだシステムを、パブリッククラウドに移行しても問題なく動くかどうか検証できるように、AWS(Amazon Web Services)やMicrosoft Azureといったパブリッククラウドを利用できるようにしている。

 さらにここ最近、普及が加速しているクラウド基盤ソフトや、ソフトウエアでネットワーク環境の設定や管理ができるSDN(Software-Defined Networking)を組み合わせたときのF5製品の動作検証も実施可能。センターに、オープンソースのクラウド基盤ソフトであるOpenStackや、米シスコシステムズのSDNソリューション「Cisco Application Centric Infrastructure(ACI)」をそろえている。

 加えて新センターには、顧客企業や、システムインテグレーターをはじめとする販売パートナー会社の担当者が、F5製品のトレーニングを実施できる専用ルームも常設。設置されたノートパソコンから、サーバールームの実機を操作するといったこともできる。装置をトレーニングルームに持ち込んで、研修を行うことも可能だという。販売パートナーが顧客企業に向けたトレーニングもできるようにする。

センターに設けたトレーニングルーム。製品に関するレクチャーのほか、室内のノートパソコンからサーバールームにある装置などにアクセスして検証作業ができる
センターに設けたトレーニングルーム。製品に関するレクチャーのほか、室内のノートパソコンからサーバールームにある装置などにアクセスして検証作業ができる
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 大がかりなセンターを立ち上げた背景には、F5ネットワークスが日本市場を重視していることが大きい。「当社グループのビジネスのうち、前年比2ケタ成長を遂げているのは、日本だけ」と、フォスメア執行役員は明かす。加えて、8年といったサポート期間の終了による装置の移行需要にも備える。国内で稼働するF5製品のうち、今年、サポート期間の終了を迎えるのは、数千台に上る。新センターの設置は、新規顧客の拡大に加えて、その移行を円滑に進めることも見据える。

■変更履歴
最後の段落で、サポート期間の終了を迎える装置の台数を、記事掲載当初、「6000台以上」としていましたが、正しくは「数千台」でした。お詫びして訂正します。記事は修正済みです。 [2017/1/20 12:00]