米Googleは2018年1月17日(米国時間)、同社が提供するクラウドのAI(人工知能)サービスをユーザー企業が容易にカスタマイズできる「Cloud AutoML」を発表した。まずは画像認識AI「Vision API」の機械学習モデルをカスタマイズ可能にし、ユーザー企業が登録する被写体をAIが認識できるようにする。

 Googleが提供するVision APIは、同社があらかじめAIに学習させた被写体を認識できるディープラーニング(深層学習)ベースのサービスである。今回Googleは、Vision APIをカスタマイズする新機能「Cloud AutoML Vision」を追加した。これは、Googleが学習させた被写体に加えて、ユーザー企業が学習させた被写体をAIが認識できるようになる機能だ()。

図●Cloud AutoML Visionの概要
図●Cloud AutoML Visionの概要
出典:米Google
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 ユーザー企業はまずWebベースのUI(ユーザーインタフェース)を使って「教師データ」を登録する。ここでいう教師データとは、ユーザー企業がAIに認識させたい被写体が映った画像データに、その被写体の名称を「メタデータ」として付与したものである。Cloud AutoML Visionは「転移学習(Transfer Learning)」という技術を使って、新しい被写体をAIに学習させる。

 転移学習とは、学習済みのモデルの一部だけを変更することで、新しい問題に対応できるようにする機械学習技術である。ユーザー企業がゼロから画像認識モデルを開発する場合は、大量の教師データが必要となる。一方Cloud AutoML Visionは、Googleが学習済みの画像認識モデルを新しい被写体に対応させるため「学習にビッグデータは必要無い」(Google Cloud AI部門の研究開発責任者であるJia Li氏)。具体的には、数十件程度の教師データを登録するだけで、新しい被写体が認識可能になる。

プログラミング作業は不要

 ユーザー企業はCloud AutoML Visionを利用することで、ユーザー企業の業界や業種、業務内容に特化した画像認識AIをプログラミング不要で実現できるようになる。「一般企業におけるAI活用の最大の課題は、AI人材やAI予算を確保できないことだ。専門家がいなくても企業がAIの利便性を享受できるようにすることがCloud AutoMLの狙いだ」。Google Cloud AI部門のチーフサイエンティストであるFei-Fei Li氏はそう語る。

 米Walt Disney Companyの子会社である米Disney Consumer Products and Interactive Mediaは、同社が販売するディズニーキャラクター商品の種類や色などを識別するAIを、Cloud AutoML Visionを使って開発したという。このディズニーキャラクター認識AIは、同社のeコマースサイトの検索エンジンや商品レコメンドエンジンなどで使う予定だ。

 Cloud AutoML Visionを使ってユーザー企業がカスタム開発した画像認識モデルは、そのユーザー企業だけが利用できる。Googleは「学習したモデルを使い回すことは無い」としている。