電子情報技術産業協会(JEITA)は2018年1月15日、市場調査会社のIDC Japanと共同で実施した「2017年 国内企業の『IT経営』に関する調査」の結果を発表した。2013年の同内容の調査(前回調査)と比べ、IT投資の重要性の認識や、IT投資全体に占める「攻めのIT投資」の比率は高まった一方、ITがもたらした効果は前回調査に比べ高まっておらず、「期待ほど実態が伴っていない可能性がある」とJEITAでは分析している。

JEITA ソリューションサービス事業委員会の東純一委員長
JEITA ソリューションサービス事業委員会の東純一委員長
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 調査は2017年9月に、従業員300人以上の国内企業を対象に実施し、各企業の経営者またはIT部門以外のマネージャー職以上から回答を集めた。回答企業は333社。

 企業が競争に生き残るために実施している投資について尋ねた設問では、情報システム投資を「極めて重要」「重要」とする回答が前回調査の計68.5%から、今回は計75.7%へ増えた。同様に、研究開発投資を「極めて重要」「重要」とする回答は前回調査の55.5%から63.9%へ、設備投資は60.6%から69.6%へ、それぞれ増加している。一方、人材投資は93.5%から92.4%へ、マーケティング投資は66.7%から66.3%へ、それぞれ微減となっている。

 企業におけるCIO(最高情報責任者)の任命状況について尋ねた設問では、「いる」との回答が54%、うち「社長/CEO(最高経営責任者)の直下にいる」との回答が38%で、前回調査(それぞれ49%、32%)より小幅に増加している。ただ、米国企業を対象に2013年に実施した同様の調査では、それぞれ99%、94%となっており、「増加傾向にはあるが米国に比べるとまだ低い」(JEITA ソリューションサービス事業委員会の川井俊弥副委員長)としている。

 IT予算の増減について尋ねた設問では、「増える傾向」との回答が52%に上り、前回調査の40%を上回った。「増える傾向」と答えた企業に増加理由を複数回答で尋ねたところ、上位3項目は「業務効率化/コスト削減」(32.8%)「セキュリティ対策」(29.9%)「新たな技術/製品/サービスの利用」(27.6%)となった。前回調査の上位3項目は「業務効率化/コスト削減」(48.2%)「ITによる製品/サービス開発強化」(22.4%)「業務プロセスのIT化」(20.0%)だった。

 このほか、「ITを活用した事業モデルの変革」も前回調査の7位(12.9%)から5位(21.3%)へ上昇している。「業務効率化/コスト削減は依然1位だが比率が減っており、代わりに新規技術の利用やITを活用した事業モデルの変革が大きく伸びていることから、日本企業でも攻めのIT投資へシフトしつつあることがうかがえる。ただ米国企業への2013年調査と比べると比率はまだ低い」(川井副委員長)としており、攻めのIT投資をさらに加速させる必要があるとの認識を示した。

 セキュリティ対策が2位となっている点については「セキュリティは経営者の責任でもある。備えておかないと市場からの信頼を損なう可能性があり、セキュリティ投資が今までより増えているのではないか」(JEITA ソリューションサービス事業委員会の東純一委員長)と分析している。

 一方、企業に対してITがもたらした効果について複数回答で尋ねたところ、上位3項目は「社内業務の効率化/労働時間減少」(45.6%)「社内情報共有の容易化」(36.9%)「市場環境変化への迅速な対応」(24.3%)となった。前回調査の上位3項目は「社内業務の効率化/労働時間減少」(43.5%)「社内情報共有の容易化」(41.2%)「人件費の削減」(26.4%)だった。JEITAは「4年前の前回調査と大きな変化がなく、ITに対する期待ほどに実態が伴っていない可能性がある」(川井副委員長)として懸念を示している。

 このほか、今回の調査では働き方改革に関する設問を新設した。働き方改革への具体的な取り組みを複数回答で尋ねたところ、上位3項目は「残業時間の規制/短縮」(39.9%)「産休/育休制度の充実」(27.6%)「ハラスメント抑止/防止のルール徹底化」(同)となった。働き方改革に向けたIT活用について複数回答で尋ねたところ、上位3項目は「テレビ会議システム」(42.2%)「モバイル機器」(32.2%)「セキュリティサービス/ソフトウエア」(23.9%)だった。