日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)は2017年1月12日、東証一部上場企業とそれに準ずる企業を対象に実施した「企業IT動向調査2017」の、IT予算に関する速報値を発表した。2017年度も、ユーザー企業は積極的なIT投資を行う見込み。特に、中堅企業での投資が活発化するという。

 2017年度のIT予算の増減予測では、2016年度に比べて「増加」とした企業が全体の34.0%に上った(図1)。さらに49.7%が、「不変(前年度並み)」と回答した。「増加」と答えた企業の割合は前回より減ったが、その分「不変」が増えたため、全体で見ると前年並み、またはそれ以上の予算が2017年に投じられると分析している。なお、IT予算を「増やす」割合から「減らす」割合を差し引いたDI(ディフュージョン・インデックス)は17.7ポイントだった。

図1●2017年度IT予算の増減 (2016年度比の増減予測)
図1●2017年度IT予算の増減 (2016年度比の増減予測)
(出所:日本情報システム・ユーザー協会)
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 売上高規模別で見ると、中堅企業でIT投資を増やす動きが目立つ。DIが最も高かったのは売上高100億円以上1000億円未満の層で、20.7ポイント(図2)。2番目は売上高100億円未満の層で、DIは18.6ポイントだった。売上高1兆円以上の企業はDIが6.1ポイントと小さいが、この層は前回調査(2016年度予測)でのDIが16.1ポイントと高かった。その反動減とみられるという。

図2●売上高別 2017年度IT予算の増減(2016年度比)
図2●売上高別 2017年度IT予算の増減(2016年度比)
(出所:日本情報システム・ユーザー協会)
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 業種グループ別では、DIが最も高いのが「建築・土木」グループの39.5ポイント。前年調査に比べて26.6ポイント上昇した。JUASは、不動産市場の好況や、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催などが背景にあると見る。逆に大きくDIを減らしたのが、「金融」グループ(マイナス21.1ポイント)。同グループは前回調査で47.1ポイントと最もDIが高く、その状況からの反動減などによるものと考えられるという。

 「IT投資で解決したい中期的な経営課題」では、「業務プロセスの効率化(省力化、業務コスト削減)」「迅速な業績把握、情報把握(リアルタイム経営)」を選んだ企業が多かった(図3)。この傾向は過去の調査でも同様だったが、2017年度はこうした課題解決の手段としてIoT(インターネット・オブ・シングズ)やビッグデータなどに注目する企業が増えているようだと分析した。

図3●IT投資で解決したい中期的な経営課題(1位~3位)・1位の降順
図3●IT投資で解決したい中期的な経営課題(1位~3位)・1位の降順
(出所:日本情報システム・ユーザー協会)
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 同調査では、4000社のIT部門長に調査票を郵送して回答を得た。有効回答社数は1071社。IT予算に関する有効回答数は668社、IT投資で解決したい経営課題に関する有効回答は1013社。今回公表したのは速報値で、正式なデータや分析結果は2017年4月上旬に発表予定という。

JUASの発表資料