KDDIは2018年1月11日、CSR(企業の社会的責任)活動の一環として、防災と情報リテラシーの教育を目的にした出張講座「スマホ de 防災リテラシー」を都内で初めて実施した。東京・千代田の共立女子中学高等学校の高校3年生47人が同講座に臨んだ。

共立女子中学高等学校で開催されたKDDIの出張講座「スマホ de 防災リテラシー」の様子
共立女子中学高等学校で開催されたKDDIの出張講座「スマホ de 防災リテラシー」の様子
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 同講座はKDDIが2017年9月から、主に高校生を対象に実施しているものだ。KDDIのCSR担当社員が高校に講師として訪問。講座専門のスマートフォン(スマホ)やSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)アプリなどを持ち込んだうえで、40人程度の受講者に防災と情報リテラシーの重要性を、ワークショップ形式で学んでもらう。

 KDDIは2005年春から、スマホや携帯電話でトラブルに巻き込まれないようにするための講座「KDDIスマホ・ケータイ安全教室」を全国の学校で、2万回実施してきた。「社会や生活に役立つスマホの使い方ができる情報リテラシーを、防災リテラシーとともに高めてほしい。そう考えて、スマホ de 防災リテラシーも始めた」と、KDDIの鳥光健太郎CSR・環境推進室長は説明する。

 ワークショップは、受講者が4~5人ほどの班に分かれて行う。班のメンバーが街中でフィールドワークを行っている最中、大地震が発生したと想定。そのうえで、まずKDDIの講師陣が各班の現在地を示した地図と、「デパート東側の通りは水があふれて通行できない」「第二橋は多くの自動車による事故火災で通行できない」といった関連の災害情報が書かれた情報シートを、各班に配布する。

ワークショップで配布された地図と、関連の災害情報が書かれた情報シート(右)
ワークショップで配布された地図と、関連の災害情報が書かれた情報シート(右)
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 情報シートに書かれた内容はその班のメンバーだけが知っている情報なので、他の班の情報はSNSで得なければならない。そこで、各班のメンバーは、SNSアプリを搭載したスマホを使って他の班と情報を共有。安全な避難場所と避難ルートを見極め、与えられた地図に書き込んでいく作業に取り組んだ。

作業に取り組む受講者たち
作業に取り組む受講者たち
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 情報シートには「高齢者が救助を待っている温泉施設」といった救助が必要な場所の情報が含まれており、各班とも1カ所は救助に向かう条件も課されている。救助場所は複数あり、中には2つの班の人手が必要なところもある。SNSを通じた班同士の連携が必須となっている。

 20分ほどの作業時間では、SNS上で頻繁にメッセージのやり取りが続いた。言葉足らずで、通行できない道の情報が他の班に正しく伝わらないといった理由から、避難ルートを適切に把握できなかった班が出ていた。一方、救助場所に向かう役割分担は、SNS上で頻繁にやり取りされていたこともあり、すべての救助場所を複数の班でカバーできていた。

スマホとSNSは講座専用のものを用意し、閉じたネットワークで利用する設定になっている。SNS上では救助の分担についてのメッセージもやり取りされていた
スマホとSNSは講座専用のものを用意し、閉じたネットワークで利用する設定になっている。SNS上では救助の分担についてのメッセージもやり取りされていた
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 参加した高校生からは「当初、手元にあった情報が限られていたが、他の班と情報を共有することで災害の状況がつかめてきた。情報の共有はとても大事で、情報提供で協力し合うのは素晴らしいことだと実感した」といった声が上がっていた。

 今回、講座の実施を企画した共立女子中学高等学校の桑子研広報部副主任によると、スマホでやり取りしたSNSのメッセージが原因でトラブルになるケースが高校生の間で増えているという。「生徒たちに適切な情報リテラシーを身に付けてほしいと考えて実施した。参加した生徒たちもワークショップ形式で互いにコミュニケーションを取り、楽しみながら学んでもらえたようだ」(同)。

 KDDIはこれまで兵庫県西宮市の高校でスマホ de 防災リテラシーを実施。2018年3月までにさらに5~6カ所で開講する予定という。鳥光室長は「生徒が住む地域が広く、登下校時の防災対策を重視している学校を中心に実施要請が増えている。2018年4月以降も実施回数をさらに増やしていきたい」と見通しを語った。