NECは2018年1月9日、英国のITサービス企業であるノースゲート・パブリック・サービス(NPS)を約713億円で買収すると発表した。英国の官公庁や警察向けに強い同社の顧客基盤やサービスラインアップを取り込み、成長の柱に据えるセーフティ事業の拡大を目指す。買収は1月末に完了する予定で、NECにとっては過去2番目の大型M&A(合併・買収)となる。

 「(成長領域の中でも)セーフティ事業は特にフォーカスしている分野だ」。記者会見に臨んだNECの新野隆社長兼CEO(最高経営責任者)は、大型買収に踏み切った理由を語る。同社は生体認証や画像解析技術を活用した入出国管理や国民IDなどのセーフティ事業に力を注いでいる。NECが技術的な強みを持っている上に、高い利益率を期待できるからだ。

NECの新野隆代表取締役執行役員社長兼CEO(最高経営責任者)
NECの新野隆代表取締役執行役員社長兼CEO(最高経営責任者)
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 買収先であるNPSは、英国の中央・地方政府向けの徴税・社会保障給付サービスや警察向けの犯罪事案管理プラットフォームを提供しており、高いシェアを占める。NPSの顧客基盤やプラットフォームサービスにNECの技術を掛け合わせることで、付加価値を発揮できると判断した。NPSの商材を、英国と法制度が似ている英連邦加盟国への展開を加速させることも考えているという。

 NECのセーフティ事業は、国内が約500億円、海外が約500億円の規模。現時点で黒字化には至っていないが、2020年には営業利益率5%以上にするのが目標だ。今回の買収はセーフティ領域でプラットフォーム事業を展開するための第1弾施策という位置づけ。同社にとって過去2番目となる巨額を投じ、最優先と位置づけた成長事業への意気込みを示した格好だ。今後もM&Aやパートナーシップによって、事業拡大を目指す方針だという。