米Appleの研究者6人が、人工知能(AI)に関する研究論文を発表した。論文は現地時間2016年11月15日に提出され、12月22日に公開された。米メディア(ForbesAppleInsiderなど)によると、AppleがAI研究論文を公表するのはこれが初めてという。

 論文はAIの画像認識能力を訓練する手法の改善に関するもので、タイトルは「Learning from Simulated and Unsupervised Images through Adversarial Training」。

 合成画像を使った機械学習モデルのトレーニングは、人の手による注釈付けといった作業がないため、現実世界の写真を使用するより効率的な手法として用いられるようになっている。しかし合成画像と現実世界の写真との差が、最終的には要求されるパフォーマンスを生み出せない可能性がある。

 そこでAppleの研究者は、「Simulated and Unsupervised(S+U)Learning」という手法を開発した。S+U Learningは、画像生成技術「Generative Adversarial Network(GAN)」を改良した対立ネットワークを利用する。ラベル付けされていない現実世界の画像を使って機械学習モデルを訓練し、より現実に近い合成画像を生成して、安定したトレーニングを実行できるようにする。

 同論文(PDF文書)は米コーネル大学図書館のWebサイトを通じて入手できる。

 米Fortuneは、秘密主義を貫いてきたAppleが研究内容を外部に明かしたことは重要だと報じている。Appleは長年、AI研究に取り組んでいるが、将来製品に追加する可能性のある研究成果の公表を禁じてきた。しかしこれは、ナレッジを共有するという科学コミュニティの伝統に真っ向から反する。

 また、AppleのAI研究は果たして最先端にあるのかという疑問も呼び、優秀な研究者を遠ざけることになっていたという。こうした事態に対処するため、Appleは今月初めに、同社の科学者がAI論文を発表することを許可する方針を明らかにしていた。

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