米Appleはインド政府と、同社製品のインド国内生産について協議していると、海外のメディアや通信社(米Wall Street Journal英Reutersなど)が現地時間2016年12月20日に報じた。

 Appleは11月にインド政府に宛てた書簡で、同国国内生産の計画概要を記し、併せて金融面での優遇措置を求めた。政府関係者がWall Street Journalに語ったという。商工省の当局者はこの件について、この数週間協議したと同紙は伝えている。

 こうしたAppleの動きは、同国における直営店開設計画と関連すると見られている。インドにはAppleが米国や日本などで展開している直営店「Apple Store」はなく、同社は現在、インドの大手・中堅小売業者と提携し「Apple Premium Resellers」というフランチャイズ方式でApple専門店を展開したり、地場小売店の中に販売コーナー「Apple Shop」を設けたりして小売り事業を展開している。

 インドではApple Storeのような店舗は「シングルブランド・リテール」に分類され、その外資比率が51%を超える場合、金額ベースで約30%の製品・部品をインド国内企業から調達しなければならない、いわゆる“30%調達ルール”がある。しかしApple製品は大半が中国で製造され、部品も中国などインド以外の国で作られているため、この要件を満たすことがでない。

 そうした中、インド政府は2016年6月、外国直接投資の規制を緩和する新制度を明らかにした。この新制度ではシングルブランド・リテールを含む特定の外国企業に対し、国内調達義務を3年間免除する。またその取り扱い商品がインド国内では入手不可能な最先端の技術と当局が認めれば、さらに免除期間を5年延長する(関連記事:Apple、インドの直営店開設計画が実現する見通し、政府が規制を緩和)。

 一方同国では、Narendra Modi首相政権の下、「Make in India(インド製造業の促進)」政策を押し進めており、Appleなどの外国企業に製造拠点を誘致し、iPhoneなどの製品をインドで生産してもらいたいと考えている。

 Wall Street Journalが引用した米IDCの市場分析によると、インドのスマートフォン市場は2017年に米国を抜き、中国に次ぐ世界第2位の規模になると見られている。iPhone販売の伸びは、ここ数年中国市場の成長に支えられてきたが、中国スマートフォン市場は現在、成長が鈍化している。「Appleは中国で経験した成長モデルをインドで実現したい考えだ」とAppleの計画を直接的に知っているインド政府関係者は述べていると同紙は伝えている。