欧州連合(EU)の欧州委員会は現地時間2016年12月20日、米Facebookがメッセージングアプリケーション「WhatsApp」を買収する際に不正確な情報を提供したとして、同社に異議告知書(Statement of Objections)を送ったことを明らかにした。

 Facebookは2014年10月にWhatsAppを買収した(関連記事:FacebookがWhatsApp買収手続きを完了、総額218億ドル超に)。WhatsAppは、氏名、住所、電子メールアドレスといった個人情報を取得せず、広告を表示しないビジネスモデルが受け入れられて人気が上昇したサービス。Facebookは買収にあたって、WhatsAppを独立した事業として維持し、プライバシー原則を変えないことを強調した。

 欧州委は2014年8月に同買収計画の報告を受け、調査を開始。その結果「欧州の市場競争を阻害しないとの結論に達した」として、同年10月に承認した(関連記事:欧州委がFacebookのWhatsApp買収計画を無条件で承認)。

 今回、欧州委の競争政策担当のMargrethe Vestager氏は「買収に関する調査期間中、当該企業は欧州委に正確な情報を提供する義務がある」とした上で、「Facebookは不正確な情報、あるいは誤解を招く情報を与えた」との予備的見解を示した。

 欧州委によると、買収計画の調査において、Facebookは両サービスのユーザーアカウントを高い信頼性で自動マッチングすることはできないと回答していた。欧州委はこれだけで承認を決定したわけではないが、この回答を正確な情報として考慮した。しかしWhatsAppは2016年8月、利用規約およびプライバシーポリシーを改訂し、電話番号などの基本的なアカウント情報をFacebookと共有する方針を明らかにした。

 欧州委はこれについて再調査し、「2014年の段階で、FacebookのユーザーIDとWhatsAppのユーザーIDを自動マッチングする技術の可能性はすでに存在していた」と判断。Facebookは意図的であれ不注意であれ、欧州委に不正確または誤解を与える情報を提供し、これがEUの企業結合規則に反すると欧州委は主張している。

 なお、これはFacebookが正確な情報を提供しなかったことを問題としており、プライバシーやデータおよび消費者保護とは関係がない。また、買収承認への影響はないという。

 Facebookは1月31日までに欧州委の異議告知書に対する回答を提出する必要がある。Facebookの規則違反が確認された場合、同社は売上高の1%に相当する罰金を科せられる可能性がある。米New York Timesの推計では、罰金は最大2億ドルにのぼる見込み。

 Facebookは「当社は技術的可能性と計画について、一貫して正確な情報を提出していた。我々は欧州委の手続きを尊重しており、本格的な調査によって当社が誠実に行動したという事実が確認されると信じている」と述べた(米CNETの報道)。

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