KDDIとゼンリン、小型無人機(ドローン)製造のプロドローン(名古屋市)は2016年12月19日、LTEを搭載したドローンの商用化に向けて協業すると発表した。3社の製品やサービスを組み合わせた業務用のドローン活用サービスを、早ければ2018年度にも始める意向だ。中長期的なドローンの用途が拡大して規制が緩和されることを見越し、ドローンの業務利用に向けた陣営作りや、技術・ノウハウの蓄積などでNTTドコモやソフトバンクに対抗する。

提携発表の記者会見で握手を交わす(左から)プロドローンの河野雅一社長、KDDIの山本泰英執行役員常務、ゼンリンの藤沢秀幸上席執行役員
提携発表の記者会見で握手を交わす(左から)プロドローンの河野雅一社長、KDDIの山本泰英執行役員常務、ゼンリンの藤沢秀幸上席執行役員
(2016年12月19日、東京・渋谷)
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 3社が「スマートドローン」と呼ぶ構想では、プロドローン製のドローンにKDDIのLTEモジュールを装着。遠隔地からドローンを操縦したり、ドローンに搭載したカメラの画像やセンサーのデータをリアルタイムに遠隔地へ伝送したりする。ゼンリンはドローンが安全に飛行できる空域を示した3次元地図の開発を進めており、同情報を提供する。

 現行のドローンは無線LANなどによる制御が大半であり、飛べる範囲に限りがある。制御をLTE回線経由とすることで、技術的には無線LANの電波が届かない遠隔地にもドローンを飛ばせる。併せて、今回の構想では、ロボットアーム付きのドローンを使って物品を運んだり、同じ空域を飛行する複数のドローンをクラウドサービスで集中管理して、安全な間隔を維持して飛ぶように各機を管制したりといった取り組みも進める。

ロボットアームを2本備えた、プロドローン製の大型ドローン。会見では、愛知県内にあるドローンを東京都内から遠隔操縦し、自動体外式除細動器(AED)をロボットアームでつかんで運搬するというデモを披露した
ロボットアームを2本備えた、プロドローン製の大型ドローン。会見では、愛知県内にあるドローンを東京都内から遠隔操縦し、自動体外式除細動器(AED)をロボットアームでつかんで運搬するというデモを披露した
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 ドローンの業務利用は、橋梁の保全管理や警備などの分野などで始まっているほか、物流や小売などの業界からも注目を集めている。LTE搭載ドローンについては、NTTドコモが2016年10月に「ドコモ・ドローンプロジェクト」を開始。目視外運航を含めた検証を始めている。ソフトバンクも2016年12月に、ドローンを無線通信の基地局として使うための実証実験を北海道で開始。KDDIも競合他社に遅れを取らないよう実用化に向けた開発を急ぐ。

 一方でドローンの飛行については、人口密集地や空港周辺での飛行、夜間の飛行、操縦者が目視確認できない範囲での飛行などを航空法などで厳しく規制している。単発の実証実験などは個別に許可を得ることで可能な場合もあるが、3社が目指すような大規模な商業利用を東京や大阪などの大都市圏で実施するのは、今のところ難しい。

 こうした状況でもKDDIは「こういう(業務用のドローンが多数飛行する)時代はすぐにやってくる」(執行役員常務 商品・CS統括本部長の山本泰英氏)と判断。まずは技術開発を優先させ、地方などから順次、試験飛行の実績を積み重ねたうえで「中央省庁や自治体などに、安全性や利便性を地道に説いていきたい」(同)とする。提携発表の記者会見で山本常務は事業規模について明らかにせず、今回は現行の規制が中長期的に緩和されるのを見越した先行投資との方向性をにじませた。