リスク解析ソリューションを手掛けるエルテスは2016年12月15日、ビッグデータ解析ソフト「VizKey」の提供を始めた。開発元であるエストニアのリアルシステムズと業務提携をしたうえで、国内への販売を本格化させる。

12月15日にエルテス本社で開かれた発表会の様子
12月15日にエルテス本社で開かれた発表会の様子

 VizKeyは、ビッグデータからヒトやモノ、出来事などのつながりを抽出して見える化するソフト。テレビの刑事ドラマでよくみる関係図を、ビッグデータ分析を経て描くツールだ。

 VizKeyでは、基幹業務システム上のデータやExcelファイル内のデータ、テキストデータなど、様々な形式のデータを取り込める。金融機関が持つお金の流れを示すデータやソーシャルネットワーク上の人間関係のデータ、Webシステムへのアクセス履歴のデータなど、様々な種類のデータを分析対象にできる。

 取り込んだデータに対する項目の関連付けといった設定や、つながりを示す図の作成は、専用画面からビジュアルにできる。

 例えば、通話履歴や通話したユーザーのデータを取り込んだ場合、あるユーザーを指定してその通話先を関係図に表示させることが、簡単なキーワード入力やマウス操作でできるようにした。

VizKeyの利用の流れ。3台の携帯電話の通話履歴ファイルを取り込むと通話記録について様々な可視化ができる
VizKeyの利用の流れ。3台の携帯電話の通話履歴ファイルを取り込むと通話記録について様々な可視化ができる
資料提供:エルテス
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 また属性情報や通話時間のデータを取り込んでおけば、画面に表示された関係図上に表示されたユーザーをクリックすると、画面上から属性情報や通話時間といったデータを確認できる。取り込んだデータに時間に関する項目が含まれていれば、時系列で関係が変化していく動きも見ることができる。

 金融機関での用途は、不審な金融取引を他のシステムで自動検知したあと、その詳細を担当者が確認するといった場面で、VizKeyを利用する。従来、不審な金融取引の詳細を調べる場合、担当者はデータベースやExcelファイルなど、分散した元データをいちいち確認する手間がかかっていた。

 「VizKeyでは、見える化した画面からドリルダウンで元データを確認して、効率よく不審な取引の見極めが可能になる」とエルテスの榎戸裕謙リスクインテリジェンス事業部事業部長は説明する。

 すでにセブン銀行が、不正利用の疑いがある口座を絞り込んだあと、詳細な調査をするのに、VizKeyを活用しているという。「不正利用の疑いがある口座と関係が深い他の口座はないか」「口座間の資金の流れはどうなっているのか」といったことを効率的に捉えるのに利用しているという。

 エルテスはVizKeyを、国内の金融機関や捜査機関などに向けて提供していく。すでに欧州を中心に17カ国で、行政機関や軍、警察機関がサイバーテロの検出などの用途で利用している。「開発元のリアルシステムズとの提携では、海外での活用ノウハウを展開したり、国内企業向けの新商品を共同で企画・開発したりしていく」と、エルテスの菅原貴弘代表取締役は話す。

 VizKeyの年間利用料は1ユーザー当たり100万円。今回の発表を機に、エルテスはVizKeyの販売と合わせて導入・活用コンサルティングサービスを提供する。製品販売とコンサルティングを含めた事業では今後1年で、1億円の販売目標を掲げる。

 エルテスはソーシャルネットワークなどでの炎上による風評被害・誹謗中傷対策サービスといったリスク対策事業を第一の柱としてきた。VizKey事業の開始で第二の柱であるリスクインテリジェンス事業の強化を図る。

 2016年11月、エルテスは東京証券取引所マザーズ市場へ新規上場した。「2020年までにビッグデータでテロを検知できるようにすることを目指して、新サービスの開発や海外製品の導入を進めてきた。今後も、リスク対策を手掛けるベンチャーという他社にない強みを磨いて成長していきたい」と、菅原代表取締役は意気込みを語る。