フレームに眼の動きを捉えるセンサーや、加速度センサーを組み込んだ眼鏡「JINS MEME」を手掛ける眼鏡SPA(製造小売り)のジェイアイエヌは2017年2月から、IoT(モノのインターネット)をテーマにしたオープンイノベーションの取り組みを本格化させる。2016年12月15日、東京・原宿の店舗「JINS MEME Flagship Store 原宿」で行われたメディア向け発表会の場で明らかにした。

2016年12月15日、東京・原宿の店舗「JINS MEME Flagship Store 原宿」で行われたメディア向け発表会の様子
2016年12月15日、東京・原宿の店舗「JINS MEME Flagship Store 原宿」で行われたメディア向け発表会の様子
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 具体的には、JINS MEMEで取得した、まばたきや視線移動、頭の傾きなどを捉えたIoTデータを、家電やデバイスの操作コマンドに変換するAndroidスマホアプリ「JINS MEME BRIDGE」を2017年2月上旬、無料で提供する。

 そのうえで2017年2月4日、前出の原宿の店舗で、JINS MEMEを入力デバイスにした活用策を広く募って実現するハッカソンを開催する。参加者を広く募り、2日間で活用アイデアを練り多様なアプリの実装を目指す。

 同じ2月中に、大阪の「大阪イノベーションハブ」、福岡の「スタートアップカフェ福岡」でもハッカソンを行う。各地でのハッカソンから優秀作品を選定。選んだ作品は、2017年3月に米国テキサス州オースティンで開催される世界最大級のマルチメディアイベント「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」で展示する予定だ。

 さらにJINS MEME BRIDGEアプリの開発実行環境「JINS MEME BRIDGE Platform」のソースコードを、GitHub上に公開していく。「オープンイノベーションにより、世界のデベロッパーからのフィードバックを広く得て改善につなげることで、一般の人にも使えるIoTソリューションへと発展させていきたい」と、JINS MEMEデベロッパー・リレーションズ担当の佐藤拓磨氏は意気込みを語る。

きっかけは「眼の動きでDJプロジェクト」

 ジェイアイエヌがIoTオープンイノベーションを本格化させるきっかけは、筋力が衰えていく難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者を支援するソリューションを開発するプロジェクト「FOLLOW YOUR VISION」だ。ここで、ジェイアイエヌは、JINS MEMEがデータ入力インタフェースとして活用する技術的なノウハウを獲得できた。それを基に「JINS MEME BRIDGE Platform」を整備してオープンにすることで、より一層の改善を加速。一般にも広く使えるIoTプラットフォームの整備へとつなげていく。

 FOLLOW YOUR VISIONというプロジェクトは、ALSをはじめとする難病患者や家族などの生活の質向上に貢献する活動を手掛ける非営利団体「WITH ALS」代表の武藤将胤氏の呼びかけがきっかけとなって、立ち上がった。

 「視線の動きでパソコンに文字を入力してコミュニケーションを取るALS患者もいるので、2015年、JINS MEMEが発売されたときには真っ先に注目した。意思伝達にとどまらず、表現も自由にできる可能性を感じた」と、自身もALS患者である武藤代表理事は説明する。

 クラブDJとしても活動している武藤代表理事は、DJコントローラーを眼の動きで操作できるアプリケーションの開発を提案。博報堂やイベント用ロボットなどのデバイス開発を手掛ける山本製作所、インビジブルデザインラボからもメンバーが集まり、2016年春から本格的にプロジェクトがスタートした。

 プロジェクトでは、武藤代表理事にJINS MEMEをかけてもらい、眼の動きやまばたき、首の傾きに関するIoTデータを収集。そのIoTデータを分析するアルゴリズムを経て、DJコントローラーを操作できるようにした。

「WITH ALS」代表の武藤将胤氏のDJとVJプレイの様子。センサーを組み込んだ眼鏡「JINS MEME」をかけたうえで、ディスプレイに浮かび上がる9つの円形アイコンを視線移動で選択。まばたきをするとそのアイコンに対応する楽曲に切り替わったり、音響エフェクトがかかったりする
「WITH ALS」代表の武藤将胤氏のDJとVJプレイの様子。センサーを組み込んだ眼鏡「JINS MEME」をかけたうえで、ディスプレイに浮かび上がる9つの円形アイコンを視線移動で選択。まばたきをするとそのアイコンに対応する楽曲に切り替わったり、音響エフェクトがかかったりする
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 具体的には、上、下、斜めの9方向への目の動きで選択肢を選び、まばたきで決定、首をかしげるとリセット、といった動きで、楽曲の切り替えや音響エフェクトの設定などができる。「映像もそれに合わせて切り替わるようにして、VJ(ビジュアルジョッキー)としての操作も連動して行えるようにしている」と、ジェイアイエヌでJINS MEME開発担当の一戸晋氏は説明する。

 アルゴリズムの開発に携わった、山本製作所の山本俊一氏は、「今回のアプリ開発を機に、斜め上の視線の動きを瞬時に把握できるようにして、楽曲の切り替えをスムーズにできるようにした。今回は、武藤氏の体の動きに特化した仕組みだが、今後はJINS MEMEをかけた誰もが操作できるようにしていきたいと考えている」と話す。