日本航空(JAL)は2016年12月5日、米IBMの自然言語処理・機械学習システム「Watson」を試験導入した。JALはWatsonをベースに開発したバーチャルアシスタントサービス「マカナちゃん」を、2017年1月10日まで同社Webサイト上で提供する。

 マカナちゃんはWebサイトの来訪者からチャット形式で質問を受け付け、JALが蓄積する旅行情報を基に適切な回答を返す。期間中の利用状況や受け答えへの利用者の反応状況などを参考にしつつ、今後本格展開するか否かを判断する。

 JALはWatsonのような技術によりWebサイト来訪者の顧客満足度を高めることを狙う。航空業界では、航空券の販売チャネルのうちWebサイトによる直販の比率が高まる一方で、電話や旅行会社など他の販売チャネルと比べ、Webサイトでは消費者に対するきめ細かいサポートが十分にできないという課題があった。

 今回の試験サービスは、親子でハワイ旅行を検討している消費者を対象とする。JALのWebサイト上でマカナちゃんのページを訪問すると、チャットウインドウ風の画面が表示される。入力フィールドに質問文を入力すると、その内容をWatsonが解釈して、マカナちゃんが適切と思われる回答を返す。

JALが2016年12月5日に試験サービスを始めた「マカナちゃん」のチャット画面。親子でのハワイ旅行に関する質問に自動で答える。「いいね」「よくないね」ボタンを用意して回答に対する利用者のフィードバックを受け付ける
JALが2016年12月5日に試験サービスを始めた「マカナちゃん」のチャット画面。親子でのハワイ旅行に関する質問に自動で答える。「いいね」「よくないね」ボタンを用意して回答に対する利用者のフィードバックを受け付ける
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 サービス開始前に、JALのWebサイトにあるコンテンツのほか、コールセンターの対応履歴、JALが蓄積している旅行関連情報、JALと日本IBMの社員約1万人が考えた想定質問などを学習データとしてWatsonに入力してある。マカナちゃんからの回答ウインドウには「いいね」「よくないね」ボタンも表示。回答内容の的確さを利用者がフィードバックできるようにした。別途アンケートも実施する。

勢い増すチャットボット

 IBMはソフトバンクと共同でWatsonを日本語化し、2016年2月から国内で本格販売。複数の用途を想定しており、今回のバーチャルアシスタントサービスのように、オンラインチャットでWatsonが利用者と対話して、利用者の質問に対する適切な回答を探し返信するサービスもその一環だ。三菱UFJ銀行は同月からWatsonを活用し、「LINE」の同社公式アカウントにおいて、利用者から同社のサービス内容や店舗などに関する質問に答えている。

 これに対抗して、野村総合研究所(NRI)も同様にチャットで対話しながら問い合わせに対応するシステム「TRAINA(トレイナ)」を2016年6月に発売。同社が得意とする金融業界など幅広い業界に展開したいとする。

 アスクルも2014年9月から、ユニバーサルエンターテインメントのチャットボット開発基盤「CAIWA」を使い、通販サイト「LOHACO(ロハコ)」に関する消費者からの問い合わせに対応。2016年5月にはスマートフォンやタブレット端末からも問い合わせ利用可能にしている。