英ARMは2016年2日、都内で年次イベントの「ARM Tech Symposia 2016」を開催した。基調講演では、ARM General Manager/Systems and Software GroupのMonika Biddulph氏が、ARM製品の主だったテクノロジーレビューを行った。
同氏はIoT時代を見据えたCPU、GPUのパフォーマンス、チップセットのセキュリティ機能、クラウドサービスについて紹介。さらにスーパーコンピュータ(スパコン)の「京」の後継機に採用されるARMプロセッサについても言及した。
ARMは、3年ほど前に設計開発チームの体制を変え、IoT時代にあらゆる市場、用途に対応すべく、CPU、GPUの開発を進めている。スマートフォンやモバイルデバイスの市場ニーズの高まりは激しく、「2009年のデバイスと比較すると、画面は24倍の精度に、通信速度は20倍にまで性能が上がっている」(Biddulph氏)。内部のプロセッサも同様であり、ARM Cortex-A73は前のモデルから1.3倍の処理速度、GPUであるARM Mali-G71は同1.5倍となっているという。
パフォーマンスの進化も重要だが、Biddulph氏は消費電力など「エネルギー効率も重要な改善要素だ」と指摘。「ESA(Energy Aware Scheduling)は、Linuxのプロセススケジューリングを最適化し、処理効率、消費電力を改善する。Googleスマートフォンなどにも採用されているテクノロジーだ」と紹介した。
Biddulph氏によれば、2015年にはMaliブランドのGPUは7億5千万個出荷され、「出荷個数では世界一だ」という。このうちMali-V61は、4K動画のリアルタム処理が可能なチップ。また、Biddulph氏は同社が提供するグラフィック描画APIであるVulkanについて、OpenGLよりもCPU利用効率がよく、画質もきれいにできることを、比較映像のデモとともに解説した。