キヤノンITソリューションズは2016年12月6日、在宅勤務などオフィス以外で働く「テレワーク」を行う社員の状況を見える化するクラウドサービス「テレワークサポーター」の提供を2017年2月に始めると発表。働き方改革の一環として政府が進めるテレワークの普及を支援するサービスと位置づけて、顧客企業に提供していく。

 特徴は、キヤノンがデジタルカメラや監視カメラに適用している顔認識技術を、テレワーク管理に応用している点だ。ノートパソコンに内蔵するカメラなどを使って、パソコンの画面に向かって仕事をしている社員と、その周囲の風景が写った画像を取得する。それを、キヤノンITソリューションズがキヤノンの技術を基に開発した顔認証技術を使って、「社員以外の人物がパソコンを操作していないか」「社員以外の人物がパソコンの画面をのぞき見していないか」といったことを自動判別できるようにした。

のぞき見を検知するとその時点のパソコンの利用状況を示す画像がクラウド上に自動保存
のぞき見を検知するとその時点のパソコンの利用状況を示す画像がクラウド上に自動保存
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 サービスは、社員が利用するノートパソコンに搭載した専用のエージェントソフトと、クラウドの組み合わせで提供する。エージェントソフトをインストールした後、社員が顔の角度を変えた自分撮り画像を複数、パソコン付属のカメラで撮影して登録。そのうえで自動判別させる。

 さらに、社員以外の人物がパソコンを操作したり、画面をのぞき見していたりするのを検知すると、その時点のカメラ画像と、パソコン画面のハードコピーの画像を、クラウドに送って自動保存。管理者はクラウド側の機能を使って「社員以外の誰がどんな情報をのぞき見ていたのか」をすぐにチェックできる。社員以外の人物ののぞき見やなりすましを検知すると、自動的にパソコンの画面表示を見えなくしたり、企業の管理者にメールで自動通知したりすることもできる。

 オフィス以外の場所でパソコンを使って仕事をする場合、社員になりすました人がパソコンを操作したり、社員以外の人が画面をのぞき見したりすると、情報漏洩のリスクは高まる。「テレワークサポーターでは、そういった事態が起きたことをすぐに突き止めて対処できるので、情報セキュリティの確保に生かせる」と、キヤノンITソリューションズの石原保志ITサービス事業本部ITサービスマネジメント事業部ITサービス事業企画部部長は、説明する。

提供開始にあたって新サービスをメディア向けに説明するキャノンITソリューションズの石原保志ITサービス事業本部ITサービスマネジメント事業部ITサービス事業企画部部長
提供開始にあたって新サービスをメディア向けに説明するキャノンITソリューションズの石原保志ITサービス事業本部ITサービスマネジメント事業部ITサービス事業企画部部長

 エージェントソフトには、勤務の開始や終了を通知したり、「所属するチームのどのタスクをするか」をマウス操作で指定したりできるボタンやプルダウンリストなどを配置。テレワークをする社員がこれらのボタン類を操作することで、上司への勤務報告ができるようにする。

パソコンで動作するテレワークサポーター専用のエージェントソフト(写真右側)。認証対象である顔の画像表示機能に、勤務報告用のボタンなどを加える
パソコンで動作するテレワークサポーター専用のエージェントソフト(写真右側)。認証対象である顔の画像表示機能に、勤務報告用のボタンなどを加える
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 キヤノンITソリューションズの松野一ITサービス事業本部ITサービスマネジメント事業部ITサービス営業部担当課長によると、テレワークを実践している企業の現場では、社員が勤務の開始や終了をオフィスにいる上司にメールで伝えたり、勤務終了後にテレワークで行った仕事の内容を日報にまとめたりする手間がかかっていることが、運営上の課題になっているという。

 松野担当課長は、「テレワークサポーターでは、テレワークを行う社員の報告にまつわる煩雑な作業を解消できるようにした。仕事中のパソコン画面上の画像をクラウドへ定期的にアップすることもできる。この機能を使うことで、社員は、オフィスとは別の場所でもちゃんと働いていることを証拠として残せる」と説明する。

 一方、管理職向けには、定期的に取得した画像データなどを基に、社員ごとに勤務実績を集計してグラフ化する機能をクラウド側で用意する。「社員がパソコンの前から長く離れている」「勤務終了の報告をした後なのに、まだパソコンで仕事をしている」といった勤務実態を把握できる。

社員ごとに勤務実績を集計してグラフ化するクラウド側にある管理機能の表示画面
社員ごとに勤務実績を集計してグラフ化するクラウド側にある管理機能の表示画面
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 テレワークサポーターの料金は1ユーザー当たり月額2000円。1カ月の勤務日数を20日とした場合、社員1人当たりの利用料は1日100円になる。在宅勤務をする社員の報告時間を、コストに換算した金額よりも抑えて、料金を設定したという。「テレワークの普及が進む大企業や中規模企業にまず提案していく。コールセンター事業者など、在宅勤務のニーズが高い業種の企業や自治体などへも訴求していきたい」と石原部長は、見通しを語る。