日本取引所グループ(JPX)傘下の東京証券取引所、大阪取引所、日本証券クリアリング機構は2016年11月30日、ブロックチェーン/分散台帳技術(DLT)を証券業務に応用するための新たな実証実験を、来春にも開始すると発表した(写真)。JPXが構築した検証環境を開放し、外部企業が独自に開発したアプリケーションも検証できるようにする。検証環境をオープンにすることで、ブロックチェーン技術の進展を加速させたい考えだ。

写真●日本取引所グループの外観
写真●日本取引所グループの外観
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 JPXは2017年3月までをめどに、Linux Foundationの「Hyperledger」で、米IBMなどが主導する「Fabric」をベースとした検証環境を構築する。システム構築には、日本IBMの協力を受ける。同検証環境ではJPXだけでなく、実証実験に参加する金融機関やITベンダー、スタートアップ企業が独自のアプリケーションを開発、実装できるようにする。多様なアプリケーションの検証を進め、証券市場インフラにDLTを適用する際の課題解決につなげる狙いがある。

 コンソーシアムのような形態を採り、実証実験に参加する企業間で知見を交換し合う。月1回は会合を開き、DLTに関する技術レクチャーなどを行うという。各参加企業は、証券機能に関するアプリケーションを検証できるが、その内容や成果までを参加企業同士で共有するかは未定。実証実験の期間は定めず、継続的に外部企業が利用できる検証環境を維持する。年明けにも参加企業の受付を開始、当面は参加費用などは徴収しない見込みだ。

 JPXは2016年4~6月にも、Fabricや「Ethereum」を活用した実証実験を実施している。同年8月には、検証結果をレポートとして公表。DLTを適用した際の利点を確認したほか、処理性能などの面で課題が残るとした。外部の力を借りることで、課題を解消し、実用化につなげることを目指す。2016年の実証実験には、金融機関6社のほか日本IBMや野村総合研究所、カレンシーポートが参加した。2017年以降の実験では、それを上回る数の企業の参加を見込む。