富士通は2016年11月25日、タイ・バンコクで「Human Centric Innovation – Driving Digital Transformation」をテーマとした「富士通アジアカンファレンス 2016」を開催した。「地域の社会や企業が抱える問題を理解するICTパートナーとして、デジタルテクノロジーを活用しながら共にイノベーションに取り組んでいきたい」という富士通の思いによって実現した今回のカンファレンス。富士通は、デジタルビジネス・プラットフォームのMetaArc、人工知能(AI)、IoT(Internet of Things)、ビッグデータ、セキュリティなどの最新の取り組みや具体的な事例を紹介した。

写真1●富士通執行役員Asiaリージョン長の広瀬敏男氏
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写真1●富士通執行役員Asiaリージョン長の広瀬敏男氏

 冒頭、まず富士通執行役員Asiaリージョン長の広瀬敏男氏があいさつした。その中で広瀬氏は、1935年の設立以来80年の歴史を誇る富士通はアジア地域でこの数年、「ビッグデータを活用した交通渋滞への取り組み」「スマート農業化」「スマート工場化」といった取り組みを官民との連携で進め、多大な成果を上げてきたと紹介。アジア地域では今、社会や企業がより一層の発展を目指すにあたってさまざまな課題に直面していると説明した。

 続いては、富士通タイランドのマネージングディレクターである古川栄治氏が壇上に立ち、タイでこれまで「豊かな夢のある未来の実現」に貢献すべく活動を続けてきたと述べた。今後はさらに、モバイル、IT(情報技術)、アナリティクス、AI、セキュリティといった先端技術を統合して「デジタルイノベーションの実現」にまい進していきたいと語った。

写真2●富士通タイランドのマネージングディレクターである古川栄治氏
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写真2●富士通タイランドのマネージングディレクターである古川栄治氏

 ゲストスピーチでは、金融セクターで長く活躍してきた元蔵相のタノン・ウィッタヤー氏が登壇。「Thailand Economic Update and How to Sustain Your Business in the Digital Age」と題し、タイが経済的に直面する問題、それに対する政策、デジタルテクノロジーの活用について話した。同氏は横浜大学経済学部を卒業した、タイきっての親日家として知られる。

写真3●ゲストスピーチで登壇した元蔵相のタノン・ウィッタヤー氏
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写真3●ゲストスピーチで登壇した元蔵相のタノン・ウィッタヤー氏

 ウィッタヤー氏は、クーデターが発生した2006年以降のタイ経済を「失われた10年」と表現する。さらに、GDP(国内総生産)の3分の2を占める輸出の停滞、トランプ米次期大統領の登場によって悪化が心配される国際貿易不均衡、従事者が全人口の40%を占める農業セクターでの生産性の低さ、先進国からの技術移転が進まず国内での開発がままならないこと、人材不足および未熟な人材育成システムといった問題点を列挙した。

 もちろん、「改善に向けた政策は打ち出されている」とウィッタヤー氏は続ける。これまでの伝統的な構造を打破するための「タイランド4.0」だ。伝統からスマートへ。「それこそ富士通のタイでの活躍を期待したい」と言葉を投げかけた。