人工知能(AI)技術を開発するスタートアップ企業のABEJAは2016年11月22日、自社SaaSに利用している深層学習プラットフォームのPaaS化を発表した。サービス名は「ABEJA Platform Open」である。12月にアルファ版の提供を開始する。2017年夏にベータ版、2017年冬に正式版の提供を予定する。

 ABEJAは小売店向けSaaS「ABEJA Platfom for Retail」を提供している(関連記事:AI技術開発のABEJA、小売店など向けのデータ分析クラウドサービスを紹介)。店舗内に設置したカメラで、来店者の動線、滞留状況をヒートマップとして可視化したり、画像認識で来店者の性別、年齢を推測したりするサービスだ。ABEJA Platform OpenはこうしたSaaSの基盤をPaaSにしたもの。大量データの取得、蓄積、学習、解析、出力、フィードバックといった機能で構成する。他システムと連携するAPIも提供する。

 データ収集や深層学習の機能は、Microsoft Azureなどメガクラウドのサービスとしても提供されている。そうしたサービスとの差異化について、ABEJAの岡田陽介氏(代表取締役社長CEO兼CTO)は「我々は2012年9月から深層学習を研究して商用化もしている。その経験を通じて、苦労するポイントが分かっている。かゆいところに手の届くツールを提供できる」とアピールした。

ABEJAの岡田陽介氏(代表取締役社長CEO兼CTO)
ABEJAの岡田陽介氏(代表取締役社長CEO兼CTO)
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 具体的な例として「アノテーションツール」を挙げた。画像に何が写っているのかを識別するシステムを作るには、コンピュータに正解データを与える必要がある。ペットボトルが写っている画像に対して、「これはペットボトルである」というタグ付けを実施するのだ。「このプロセスがなかなかうまくいかない。それを簡単に実施できるようにするツールを提供する」(岡田氏)。

 アルファ版のPaaSはパートナープログラムへの参加企業に対して提供する。2016年11月22日からパートナー企業の募集を開始した。パートナープログラムへの参加は無償。岡田氏は「囲い込みは考えていない。我々自身がビッグデータ、深層学習の取り扱いで苦労した。そこが足かせになって日本企業の取り組みが遅れるのはもったいない。知見を公開することでビジネスを加速したい」と語った。