経済産業省と情報処理推進機構(IPA)は2016年11月18日、電子行政や企業システムで扱う文字や用語を共通化する政府公式の「情報共有基盤(IMI)サイト」を開設した。基盤の普及を促して、システムの開発スピード向上やシステム間のデータ連携に弾みをつけたい考えだ。
情報共有基盤(IMI)サイトは、氏名の文字を統一する「文字情報基盤」と、単語の表記・意味・データ構造を統一する「共通語彙基盤」の関連情報や実装モデルなどを提供する(図)。これまでIPAのサイトにあったものの、政府公式サイトとして省庁や官民の垣根を越えて基盤の整備や普及を促す。
このうち文字情報基盤は、2017年にも約6万文字がISO(国際標準化機構)規格としての承認を経て統一される見込みだ。共通語彙基盤はあらゆるサービスで使われる住所や氏名などの「コア語彙」の整備にめどが付き、「欧米の同様の取り組みとも話し合いを進めている」(平本健二政府CIO補佐官)という。自動運転システム向けに、交通規制や設備情報のデータについて実証実験も行う予定だ。
従来のシステム開発では、行政機関や企業、部署によって、同じ事柄でも異なる単語を使っていたり、同じ単語でも概念が異なっていたりした。そのため、システムを構築する前にマスターデータを整備するのに膨大な労力をかけていた。データ構造が不十分なために、実務に合わないシステムが作られる要因にもなってきた。
共通語彙基盤を利用すれば、データ構造から取捨選択するだけでシステムやアプリの開発に着手できる。ベンダーにとっては大幅な生産性や品質の向上につながる。異なるシステム間でデータ連携がしやすくなり、IoT(インターネット・オブ・シングズ)の普及にもつながる。
例えば、自治体で公園を管理する部署は、管理システムで公園の広さや防災倉庫の有無といったデータを扱う。ところが、同じ自治体の災害対策の部署が異なるデータ構造で管理していると、同じ公園なのに災害など緊急時にデータを連携できない。隣接する市区町村とも共有しにくかった。自治体が共通語彙基盤に基づくデータ構造で管理していれば、「災害アプリを短時間に作って地図上で避難所の情報検索もできる」(平本氏)。
共通語彙基盤は従来の標準化とは異なり、既存のシステムのデータ構造を変える必要はない。外部連携する際にデータを変換するマッピングの対応表を作るインタフェースを優先した。細かな語彙の構造を知らなくても、共通語彙基盤にマッピングさせるツールも開発するなど、柔軟な使い方ができる。
新たな政府公式サイトでは、こうした取り組みの情報発信を強化する。また今後は、交通や医療など専門分野の関係者に協力してもらう「IMIパートナーズ」という制度を始める。データの専門家がアドバイスをしながら基盤整備を進める計画だ。