「自動運転車の実現には多くの課題がある」「業種や分野、国境を越えた協力が重要だ」

 2016年11月18日に都内で開催されたサイバー問題に関するイベント「Cyber3 Conference Tokyo 2016」(主催は日本経済新聞社、会期は同19日まで)では、自動運転車が抱えるセキュリティなどの課題をテーマにしたパネルディスカッションを実施。活発な議論が交わされた。

パネルディスカッションの様子
パネルディスカッションの様子
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 ディー・エヌ・エー(DeNA)の茂岩祐樹システム本部セキュリティ部部長は、メーカーの立場から「自動運転車の性能評価の基準をどうするのか、V2X(車車間通信および路車間通信)のインフラをいつどのように整備すべきかが課題」と語った。

 経済産業省の奥田修司製造産業局自動車課電池・次世代技術・ITS推進室室長は、2020年までに自動運転を実現したいとする政府の取り組みを紹介。実現のためには「メーカー間の競争は重要だが、協調する部分も必要だ。国際的なルールも作らなければならない」とした。

 車載電子制御システムのソフトウエアや通信ネットワーク技術の標準化などを目指す業界団体「JASPAR」で、情報セキュリティ推進ワーキンググループ主査を務めるトヨタ自動車の橋本雅人電子プラットフォーム開発部長は、サイバー攻撃の脅威に言及。「進化するサイバー攻撃に対し、完璧な対策をするのは難しい。まずは検知技術と多層防御に注力し、深刻な被害を抑えることが重要だ」。

 暗号技術に詳しい東京電機大学の猪俣敦夫未来科学部情報メディア学科教授は「公開鍵暗号ではRSA(Rivest Shamir Adleman)より短い鍵長で、同程度の安全性を保証できる楕円曲線暗号という仕組みが出ている。しかし、既にRSAが普及しているという理由でなかなか移行が進んでいない」と話す。

 TMI総合法律事務所パートナー弁護士で、モデレーターを務めた大井哲也氏は、「自動運転車が事故を起こした場合、誰が責任を取るのかは最も白熱している議論の一つ」と紹介。「個別事例について判例が積み重なる中で、社会的な落とし所が定まり、それが新たな規制や法律につながっていくだろう」と語った。