日本経済新聞社が2016年11月18日~19日にかけて開催中のセキュリティイベント「Cyber3 Conference Tokyo 2016」のパネルディスカッションで、リオ五輪およびロンドン五輪のセキュリティ関係者らが五輪のセキュリティ対応から得られた教訓を明かした。

パネルディスカッションの様子
パネルディスカッションの様子
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 登壇者が特に強調したのは情報収集・共有の大切さだ。リオ五輪では大量のパケットを送り付けてサービスを不能にするDDoS攻撃が目立ったが、五輪の運営に大きな影響はなかった。リオデジャネイロ州情報技術・コミュニケーションセンター(PRODERJ)のアントニオ・ホセ・アルメイダ・バストスCEO(最高経営責任者)は、「他の機関のセキュリティ担当者と常に連絡を取り合い、どのような攻撃予告があるのかを事前に把握し、常に準備ができている状態にしたことが効果的だった」と説明する。

リオデジャネイロ州情報技術・コミュニケーションセンター(PRODERJ)CEOのアントニオ・ホセ・アルメイダ・バストス氏
リオデジャネイロ州情報技術・コミュニケーションセンター(PRODERJ)CEOのアントニオ・ホセ・アルメイダ・バストス氏
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 チーム作りも大きなポイントになる。2012年のロンドン五輪のセキュリティオペレーションに携わったPwC 英国 シニアサイバークライムアドバイザーのチャーリー・マクマーディ氏は「ロンドン五輪では早い時期からタスクフォースを立ち上げた。戦略的に行動するために重要なのは信頼関係を築いておくことだ」と指摘する。

 チーム作りやコミュニケーションは、2020年の東京五輪で懸念される点でもある。「リオ五輪では、セキュリティオペレーションに関してチームが一丸となって取り組めた。英語での意思疎通に支障がなく、阿吽の呼吸のようなものがあった。東京五輪では文化や言語の違いを超えて意思の疎通ができるかが課題になるだろう」(シマンテックコーポレーション チーフストラテジーオフィサーのジュゼッペ小林氏)。

 モデレータを務めた慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 教授の土屋大洋氏は、「スピーカーもパネリストも情報収集の重要性をうったえていたのが印象的だった。日本だと憲法21条の通信の秘密に抵触するおそれがあることから、ロンドンやリオのような情報収集が難しい。東京五輪に向け情報収集・共有の仕組みをいかに構築するかは大きな課題だ」と振り返った。

モデレータを務めた慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 教授の土屋大洋氏
モデレータを務めた慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 教授の土屋大洋氏
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