「米国大統領選でトランプ氏が勝ったのは、日本の人工知能(AI)にとって良かったのですか?」。パネリストとして登壇していたタレント、エンジニアの池澤あやかさんが、進行役を務める東京大学の松尾豊氏に突然質問する。松尾氏は「クリントン氏はAIの価値を理解しており、国を挙げて研究開発に注力したはず。これに対し、トランプ氏は人生でAIに関わった経験はおそらくなく、AI嫌いではないか。日本にとっては好都合かもしれない」と答える──。

 人工知能学会が2016年11月11日、設立30周年記念イベントの一環として開催したパネルディスカッションで、こんなやり取りが交わされた。

パネルディスカッション「人工知能と倫理」の様子
パネルディスカッション「人工知能と倫理」の様子
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 パネルのタイトルは「人工知能と倫理~これからの世代が感じる人工知能の倫理観」。人工知能学会倫理委員会の委員長を務める松尾氏は、「いつもは主に40代から50代の委員で議論している。今回は若い世代がどのように考えているかを聞きたい」と狙いを語った。

 登壇者の一人、東京都市大学付属高等学校3年生の佐藤太一さんは「AIの開発よりも、社会にどう応用していくかに興味がある」と話す。「SiriやCortana、Amazon Echoを見ても、開発にとどまると社会への応用がうまくいかず、宝の持ち腐れになると思う。AIコーディネーターみたいな人たちが出てくると、これからの世界は良い方向にいくのではないか」。

東京都市大学付属高等学校3年生の佐藤太一さんと、タレント、エンジニアの池澤あやかさん
東京都市大学付属高等学校3年生の佐藤太一さんと、タレント、エンジニアの池澤あやかさん
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 池澤さんは「AIはドラえもんを目指してほしい。その人に100%チューニングされた友達的な存在が出てくると、人間も変わるのでは」と言う。ただ、「統合されたAIが出てくるのはまだ先だと感じている」として、「いま興味を持っているのは、機能を補足するための機械学習。もっと造詣を深めていきたい」と語る。