米大統領選の投票で共和党候補Donald Trumpの勝利が現地時間2016年11月8日に確定したことを受け、米技術業界から上がっている不安の声を、米Wall Street Journal(閲覧には有料登録が必要)や米New York Timesなどが伝えている。

 選挙期間中のTrump氏の移民や貿易などの政策に関する極端な発言は、高度なスキルを持つ移民や米国外からの収入を重視している技術企業に懸念を抱かせ、米PayPal共同創業者で投資家のPeter Thiel氏以外にTrump氏を支持する米技術大手のリーダーはほとんど見当たらなかった。

 民主党候補のHillary Clinton氏が技術産業に向けた詳細な方針を示していたのに対し、Trump氏は正式な見解を明らかにしていなかったが、大手技術企業を批判する発言は多く聞かれた。例えば、米Appleが「iPhone」のパスコード解除に関して米連邦捜査局(FBI)の協力要請を断ったことからApple製品のボイコットを呼びかけたり、米Microsoftが当局による個人情報開示要請について米政府を相手取って訴訟を起こしたことを激しく非難したりした。

 Trump氏は、米Amazon.comのJeff Bezos最高経営責任者(CEO)が収益をあげるために「Washington Post」紙を利用しており、同社を独占禁止法違反で調査するとも述べていた。

 Barack Obama現大統領の政権下では、技術企業は米国の経済的および社会的成長の原動力となり、特にAppleやMicrosoft、Amazon.com、米Googleは急速に成長してきた。これら企業および米Facebookは選挙結果についてコメントを出していない。

 米SlackのStewart Butterfield共同創業者は「深い悲しみに暮れている」と嘆き、米BoxのAaron Levie CEOは「Trump氏の発言の多くは、米国経済を支えてきたシリコンバレーの考えと正反対だ」と述べている。

 一方で、Trump氏はビジネス寄りであるため、技術産業に対して厳しい規制を設けない可能性が高く、技術企業にとって光明だとする意見もある。