オーファンワークス実証事業実行委員会(権利者団体9団体で構成)は2016年11月9日、権利者が不明の著作物(権利者不明著作物)を使うための仕組みである「裁定制度」の利用に当たっての作業負担や処理コストの軽減に向けて、同制度の利用円滑化の方策に関する実証事業を10月に開始したと発表した。

 同日の記者発表会では、委員長の三田誠広氏(日本文藝家協会 副理事長)や幹事の瀬尾太一氏(日本写真著作権協会 常務理事)らが権利者不明著作物や今回の実証事業について説明した(写真1写真2)。現行の裁定制度では、著作物の権利者が不明であるという事実を担保するため、利用者は「相当な努力」とみなされる水準の権利者捜索を行う必要がある。今回の実証事業では、この作業を実行委員会が権利者団体の協力を得て実施する。

写真1●委員長の三田誠広氏
写真1●委員長の三田誠広氏
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 実行委員会は、Webサイトなどを通じて一般企業などを対象に裁定制度の利用希望を募集する。その後、権利者不明著作物における権利者の特定を、「Web上での捜索」「権利者団体のデータベースでの捜索」「権利者の連絡先を知っているかもしれない出版社などへの問い合わせ」という三つの手段で図る。

 権利者不明と判断した著作物については、Web上で公開するとともに、妥当な補償金の金額を権利者団体の意見を聞くなどして算出する。補償金の支払い義務は実行委員会が負い、補償金と同額を利用者が負担する仕組みとする。

 実行委員会による文化庁への裁定申請は毎月1回実施する。裁定の手数料は実行委員会が負担する。著作物一つ当たりの処理コスト低減に向けて、原則約1カ月間の期間を設けて利用希望を受け付け、ある程度の量の権利者不明著作物をまとめたうえで一括処理を実施するようにする。幹事の瀬尾氏は、「1申請当たりのコストが2万円として、200の著作物をまとめて申請すれば、一つ当たりのコストは100円になる」と説明した。

写真2●幹事の瀬尾太一氏
写真2●幹事の瀬尾太一氏
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 実行委員会は、2016年11月、同12月、2017年1月の計3回の裁定申請を実施する予定。2017年3月には今回の実証事業に関する報告書を作成するとともに、シンポジウムを開催して実証事業の成果について報告する。2017年4月以降については、裁定制度利用円滑化の事業化を目指すという。