ビッグデータ分析のクラウドサービスを提供する米Treasure Dataは2016年11月7日(米国時間)、SBIインベストメントや産業革新機構などから2500万ドルの資金を調達したと発表した。会社設立以降では3回目(シリーズC)の資金調達で、これまでの調達総額は合計5400万ドルに達する。

 Treasure Dataは2011年に、芳川裕誠氏、太田一樹氏、古橋貞之氏の3氏が米マウンテンビューで起業したスタートアップ(写真)。同社は今回の資金調達に合わせて、自社が提供するクラウドサービスを「Live Data Management Platform」と呼称し始めている。

写真●米Treasure Dataの太田一樹CTO(最高技術責任者、左)と芳川裕誠CEO(最高経営責任者、右)
写真●米Treasure Dataの太田一樹CTO(最高技術責任者、左)と芳川裕誠CEO(最高経営責任者、右)
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 Treasure Dataのサービスは当初、分散データ処理のオープンソースソフトウエア(OSS)である「Hadoop」と、自社で開発してOSSとして公開したデータ収集ソフトの「Fluentd」、自社開発のカラム型ストレージ「Plazma」を核とするデータウエアハウス(DWH)のクラウドとして始まった。それが現在は、DWHの枠を超えた汎用的なデータ分析プラットフォームに成長している。

 具体的には、高速SQLクエリーエンジンのOSSである「Presto」や、Treasure Dataが開発を主導する機械学習ライブラリの「Hivemall」(関連記事:日本発OSSで初の快挙 ASFが認めた機械学習ライブラリ「Hivemall」)、自社で開発してOSSとして公開したワークフローエンジンの「Digdag」などを新機能として追加。発生したばかりのデータを対象に分析クエリーを実行したり、その分析結果をほかのシステムに反映させたりできるようになった。

 「DWHは過去に蓄積したデータを対象に、データ分析をするというイメージがある。そうではなく、発生したばかりの新しいデータを活用するプラットフォームであるというメッセージを、Live Data Management Platformという名称に込めた」。同社マーケティング責任者の田村清人氏はそう説明する。

今後はデジタルマーケティングなどに注力

 同社の太田一樹CTO(最高技術責任者)は、Digdagをベースにしたワークフローエンジンの存在を強調する。太田CTOは、「ワークフローエンジンを搭載することで、Treasure Dataのプラットフォームを中核とし、さまざまなデータソースのデータを分析し、その分析結果をさまざまなシステムに出力するデータ分析アプリケーションを開発できるようになった」と語る。現在はTreasure Dataがマーケティング分析アプリケーションなどを開発して、顧客企業に対してサービスとして提供している。

 Treasure Dataのプラットフォームはさまざまなビッグデータ分析に活用可能だが、最近の動向としては、消費者行動分析といったマーケティング用途での採用が増えているという。顧客企業もTreasure Dataのサービスを導入する際には、他社のDWHクラウドと比較するのではなく、「Adobe Marketing Cloud」のようなマーケティング分析用のSaaS(Software as a Service)と比較する傾向がある。

 今後はデジタルマーケティングなどアプリケーションのサービスを充実させ、「データサイエンティストを雇用できないような普通の企業が、高度なデータ分析を実現できる。そういうプラットフォームへと成長させていく」。同社の芳川裕誠CEO(最高経営責任者)はそう意気込む。

 今回の資金調達には前述の2社以外に、既存投資家である米Sierra Venturesや米Scale Venture Partners、アイティーファーム、米AME Cloud Ventures、個人投資家のBill Tai氏、電通のファンドである「電通デジタル投資事業有限責任組合」などが参加している。