経済産業省とデジタルコンテンツ協会は2016年10月27日から30日までの4日間、東京・青海の日本科学未来館でイベント「デジタルコンテンツEXPO(DC EXPO) 2016」を開催した。コンテンツの制作や表現を支援する「コンテンツ技術」をテーマにしたイベントで、先端技術を駆使したコンテンツが集結した。

 イベントでは約70近い技術やサービスを公開。中でも際立っていたのが「8K高精細3D映像」「テーブルの上やディスプレイ上に3D映像」といった、VR(仮想現実)の見せ方の多様さだった。

サカナクションをライブ以上の臨場感で魅せる

 8K高精細3D映像を公開していたのが、NHKメディアテクノロジーとNHKエンタープライズだ。270インチ型スクリーンに投影して専用眼鏡でみる3D映像は、8Kと高精細。これに22.2チャンネルのサラウンド立体音響システムと、レーザーやスモークといった舞台設備を組み合わせて、ライブ会場での没入感を演出した。

 いわばシアター型VRと呼べるタイプの見せ方だ。NHKエンタープライズの福原哲哉グローバル事業本部展開推進エグゼクティブ・プロデューサーは、「大画面にすることで実際の人物が等身大に見える感覚を持たせている。そのうえで、コンテンツを工夫し、ライブ会場にいる臨場感を超える体験を提供することを目指した」と話す。

 DC EXPOの会場では、世界初の「8K:VRシアター」が設置された。上映したのは「Aoi~碧~サカナクション」と題したコンテンツ。人気バンドのサカナクションのライブ映像や海中を表現したCG、東京の夜景映像などを組み合わせたものだ。

NHKメディアテクノロジーとNHKエンタープライズが出展した「8K:VRシアター」の上映の様子。宇宙の表現もコンテンツに盛り込んだ
NHKメディアテクノロジーとNHKエンタープライズが出展した「8K:VRシアター」の上映の様子。宇宙の表現もコンテンツに盛り込んだ
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 5分程度の内容だが、海中でサカナクションのメンバーを出現させたり、熱演するメンバーたちが“回り舞台”に立っているように見せたりして、通常のライブにはない視点や感覚を映像に盛り込んだ。注目度はDC EXPOでも高かった。1回の上映で60人ほどが閲覧できるが、毎回ほぼ満員。上映前は長蛇の列ができていた。

 NHKエンタープライズが同コンテンツを制作したのは2015年後半のことという。「まだ8Kのプロジェクターが少なく、コンテンツを制作してもテストできる機会が限られていて、制作プロセスの先が見通しにくい状況だったが、3カ月かけて作り上げた」と福原氏は振り返る。

 同社は同コンテンツを2015年11月に東京・渋谷で公開したところ好評を博し、2016年に海外の大きなビジネスイベントで出展しても反応が良かったという。「(8K:VRシアターの)商用化を目指して顧客企業に向けて企画提案を進めている」と福原氏は明かす。