東芝は2016年10月26日、ラグビーのプレーを分析するシステムを開発し、同社のラグビー部で実証実験を開始すると発表した。自社で開発した画像認識、音声認識、ディープラーニングの技術を使い、録画した映像から選手一人ひとりの動きやボールの動きを見える化する。実証実験で培ったノウハウを、製造業向けの生産性向上のソリューションに展開していく計画だ。

 実証実験は、東芝のラグビー部「東芝ブレイブルーパス」の試合で実施する。選手とボールの動きを追跡したり、それらのフィールド上での位置を推定したりすることで、選手やボールの軌道をパソコンの画面に映し出し、一連のプレーを分析できるようにする。

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 選手やボールの動きは、画像認識技術を使って追跡する。個別の選手を正確に識別したり、人ごみに隠れてしまった選手やボールの動きなども正確に推定したりできるように、ディープラーニングを活用する。選手のユニフォーム(背番号)や体格、顔、動きなどを学習させて認識の精度を高める。ラグビーでは審判のホイッスルが一連のプレーの区切りになるため、音声認識技術でホイッスル音を自動検出する仕組みも組み込んでいる。

製造現場での動線分析や作業内容分析に生かす

 東芝は、実証実験で得られた知見を応用して、既存の画像・音声認識ソリューション「RECAIUS(リカイアス)」を機能強化。主に製造現場向けに生産性を向上させるためのソリューションとして、提供していきたい考えだ。

 例えば、ラグビーでは多数の選手が同時に1個のボールを奪い合う。今回の実証実験で、こうした多数の人やモノを同時に認識し、それらの動きを追跡する技術を蓄積できる。この技術を、工場内を移動する多数の人やモノの動線分析に応用していく。

 ほかにも、ラグビーではスクラムやモールなど、一連の動きに特徴を持ったプレーがある。これらのプレーを正確に識別する技術を蓄積できれば、一連の作業内容を把握したり、時間測定したりすることが可能になる。

 実験期間は今シーズン(2016年8月26日~2017年1月14日)の間、実施する予定。来シーズンには本格的な導入に踏み切り、2019年9月に国内で開催予定の「ラグビーワールドカップ2019」での実用化を目指す。

 今回の実証実験では、慶應義塾大学理工学部の青木義満準教授が協力する。スポーツの映像解析で多くの実績を持つ研究室で、同研究室が持つノウハウを組み合わせてラグビーのプレーを画像認識する精度を高めていく。