映画や音楽、出版、新聞、放送など著作物に関わる7団体は2016年10月24日までに、「『柔軟な権利制限規定』についての私たちの意見」と題する声明文をとりまとめて、発表した。

 イノベーションを通じた新産業の創出のため著作権法に「柔軟な権利制限規定」を設けるべきという意見があることに対して、反対を表明する内容となっている。新産業の創出は、あくまで著作権者との協力関係によって実現すべきと主張する。

 声明文では、柔軟な権利制限規定を設けると、「居直り侵害者」「思い込み侵害者」が増加し、非生産的な侵害対策コストがますます増大することなどを懸念する。懲罰的賠償制度などの法制度を持つ米国などと異なり、日本は損害賠償請求などの訴訟で侵害対策コストの回収は困難であることや、米国型の紛争解決制度の導入はコンテンツ産業のみならず日本社会全体における紛争解決コストの拡大につながるとも指摘する。

 声明文では、米国などと異なる日本の法制度のもとでは米国型の「柔軟な権利制限規定」を導入するのではなく、「個別の権利制限規定」をスピーディに立法化し、権利制限規定を適切に運用することで新たな時代に適応することが正しい、との考えを示した。

 この声明文には、日本映画製作者連盟、日本音楽事業者協会、日本雑誌協会、日本書籍出版協会、日本新聞協会、日本民間放送連盟、日本レコード協会が名前を連ねた。声明文は9月30日付である。

 「知的財産推進計画2016」では、「デジタル・ネットワーク時代の著作物の利用への対応の必要性に鑑み、新たなイノベーションへの柔軟な対応と日本発の魅力的なコンテンツの継続的創出に資する観点から、柔軟性のある権利制限規定について、次期通常国会への法案提出を視野に、その効果と影響を含め具体的に検討し、必要な措置を講ずる」などと記載している。また、文化審議会の文化審議会著作権分科会では、法制・基本問題小委員会の下に「新たな時代のニーズに的確に対応した制度等の整備に関するワーキングチーム」を組織し、この問題の検討を進めている。

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