米国の市場調査会社eMarketerが現地時間2016年10月20日に公表したリポートによると、1946億ドル(約20兆2579億円)の市場規模が見込まれる今年の世界ネット広告市場に占める、中国Alibaba Group(阿里巴巴集団)のネット広告収入シェアは4.6%となり、昨年の5%から低下する見通し。また中国Baidu(百度)のシェアも4.6%となり、昨年の5.5%から低下するとeMarketerは見ている。

 ただ、1088億8000万ドル(約11兆3322億円)が見込まれる今年のモバイルネット広告市場に占めるAlibabaのシェアは10.9%となり、昨年の8.7%から上昇する見通しという。これは中国における中間層の増加や、高速インターネットサービスとモバイル端末の普及がその要因だとeMarketerは分析している。

 同社の推計によると、今年の中国におけるモバイルネット広告の市場規模は279億ドル(約2兆9027億円)。このうちAlibabaの占める比率は39.7%となり、昨年の35.0%から拡大するとeMarketerは見ている。これに対し、Baiduの中国モバイルネット広告市場に占めるシェアは昨年の26.7%から今年は19.7%に低下するという。

 eMarketerはその理由として、電子商取引をはじめとするAlibabaのエコシステム(生態系)の拡大を挙げている。Alibabaの主力事業である電子商取引の分野では、国外の商品をネットで直接購入するクロスボーダーeコマースが中国で人気を集めているという。

 同社が2014年に立ち上げたオンラインショッピングモールのグローバル版「Tmall Global(天猫国際)」やJD.com(京東商城)が2015年に開始した同様のサービス「JD Worldwide」などによって、海外のブランドは中国の消費者に自社商品を直接販売できるようになった。これにより中国消費者の海外ブランドに関する認知度が高まった。また中国における生活水準の向上もクロスボーダーeコマースが人気になった要因の1つという(関連記事:Alibaba、国際戦略を推進、「Tmall Global」に11カ国参加)。

 eMarketerのアナリスト、Andria Cheng氏は、「中国経済の減速や、その個人消費に及ぼす影響については懸念があるものの、オンラインメディアやオンラインエンターテインメント、ソーシャルメディア、eコマースといった自社エコシステムに消費者をとどめておくAlibabaの戦略は、引き続き同社の健全な成長を後押しするだろう」と述べている。

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