図1 講演する東京大学 教授の坂村健氏
図1 講演する東京大学 教授の坂村健氏
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図2 アグリゲート・モデルでは、組み込み機器はそのメーカーのクラウドに接続する。APIを公開することで、異なるメーカーの機器間の連携が可能になる
図2 アグリゲート・モデルでは、組み込み機器はそのメーカーのクラウドに接続する。APIを公開することで、異なるメーカーの機器間の連携が可能になる
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図3 機器の接続先のクラウドを限定することで、少ない計算資源で高いセキュリティーを確保できる
図3 機器の接続先のクラウドを限定することで、少ない計算資源で高いセキュリティーを確保できる
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 「組み込み機器メーカーもサービス志向にビジネスモデルを変えなればならない。製品を売って終わりではなく、組み込み機器のようなエッジノードは、IoTにおけるサービスの“蛇口”になると意識するべきだ」。こう語るのは、リアルタイムOS「TRON」の業界団体「トロンフォーラム」の会長を務める東京大学 教授の坂村健氏である。同氏は、同団体が考えるIoTのオープン基盤「IoT-Aggregator」について、「FACTORY 2016 Fall」(2016年10月19~21日、東京ビッグサイト)で講演した(図1)。

 IoT-Aggregatorとは、組み込み機器メーカーのクラウドや、各種アプリケーションを連携させる基盤のことである。IoT-Aggregatorは「アグリゲート・モデル」を採用している。アグリゲート・モデルでは、組み込み機器はそのメーカーのクラウドに直結する(図2)。A社の機器はA社のクラウド、B社の機器はB社のクラウドに接続し、それぞれのメーカーがクラウドのアプリケーション・プログラム・インターフェース(API)を公開することで、機器の連携を可能にする。

 組み込み機器とクラウドの間を仮想的に常時直結状態にすることで、複雑な処理は全てクラウド側で処理をする。このため、組み込み機器側に複雑な管理機能は必要なくなり、エッジ側の処理を軽くできる。加えて、組み込み機器の接続先のクラウドを限定することで、少ない計算資源で高いセキュリティを実現できる。例えば、接続先のアドレスはROMに書き込んでおけば、それを簡単に書き換られにくくなる。

 アグリゲート・モデルを採用すれば、組み込み機器メーカーがIoTサービスを主導できるかもしれない。アグリゲート・モデルでは、組み込み機器の接続先のクラウドは、組み込み機器のメーカーが用意する。サービスの“水源”となるクラウドと、サービスの“蛇口”となる組み込み機器を押さえることができるので、IoTシステムにとって重要なビッグデータやその解析などのノウハウが組み込み機器メーカー側にも残る。

 坂村氏は「IoTの実現にはAPIのオープン化が重要」と強調する。APIをオープンにすることで、他社の機器と連携できるようになるだけでなく、社外の人が自由な発想でアプリケーションを開発することができるようになる。そのため、結果として自社の製品やサービスの発展につながるという。