東京ビッグサイトで2016年10月19日から21日まで開催されている「ITpro EXPO 2016」で、ファナック取締役専務執行役員ロボット事業本部長の稲葉清典氏は、同社の開発する製造業向けIoTオープンプラットフォームである「FIELD system」を紹介した。

ファナックの製造業向けIoTオープンプラットフォーム「FIELD system」を紹介する稲葉清典氏
ファナックの製造業向けIoTオープンプラットフォーム「FIELD system」を紹介する稲葉清典氏
(撮影:菊池 一郎、以下同じ)
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 FIELD systemは工場のロボット(生産用の機械や設備など)とクラウドシステムを連携することで、賢い動作の学習や、生産効率の向上を実現できるのが特徴という。稲葉氏はFIELD systemの次の段階として、ロボット同士が通信し合うことで、協調制御や加工条件の即時調整といった機能の実現が図れるとした。

 FIELD systemはロボットをクラウド上のシステムに接続し、AI(人工知能)技術を適用することでロボットに動作を学習させてより良い制御を実現したり、ロボットの状態を見える化したりする。例えば、ロボットが人工知能によって自ら学習していく機能や、故障予知・診断、遠隔監視、品質の担保が可能になる。

 また従来の「閉じた」工場モデルと異なり、FIELD systemは複数の工場をつないで連携できるオープンなプラットフォームになっている点が特徴という。サードパーティによるアプリケーションやドライバーの開発を可能にすることで、機能を拡張するのも容易になる。

 クラウドから最新のアプリケーションをFIELD systemへ導入すれば、最新の機械でなくても最新の機能を持たせられる。稲葉氏は、個々の機械を「コンバータAPI」でFIELD systemへつなぐことができれば、「現在稼働している200万台のファナックのロボットで最新の制御を導入できる見込みだ」とした。

 FIELD systemの通信やシステム管理運用はNTTグループが、プラットフォームの基本アーキテクチャはシスコシステムズが、AIはPreferred Networksが構築した。ソフトウエア開発などを担当するその他の企業を合わせて、現在約300社と連携を図っているとした。ファナックはこのFIELD systemのα版を2016年12月からパートナーにも展開する予定である。

次世代のFIELD systemはロボット同士の会話が可能に

 稲葉氏は次の目標を、ロボット同士がリアルタイムで通信しあうことで「会話して協調し合うように」円滑に作業できるようにすることである、とした。ロボットを密に並べて作業を並行させて生産量を調整したり、品質に問題があった場合にすぐに加工条件を調整したりできるようになるという。

 これを実現するには、リアルタイムでの協調を支援する通信システムが必要だ。協調作業ではロボット同士がぶつかるのを防いだり、他のロボットによる作業を反映して自機の動作を決めたりといった高度な制御が求められるためだ。現在でもシミュレーション上でロボットに動作を学習させることである程度の改善は図れるが、条件の変更や作業の複雑化へ対応するには限界がある。

 現状では、ロボットの動作情報をクラウド上のシステムに送ってから動作に反映させるには数秒かかる。動作が速いロボットだと、ぶつかる恐れがある。そこで同社はクラウドではなく、通信基地局などクラウドよりも近いところに設置する「フォグ」を介して通信するようにする。これで、動作に反映するまでの時間をミリ秒単位まで短縮できるとした。

講演の様子
講演の様子
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■変更履歴
第2段落の「ロボット」について、講演の内容に基づいて補足しました。[2016/10/24 19:30]