クラウドサービスやIoTの導入支援事業などを手がけるウフルで、ウフルIoTイノベーションセンター所長を務める八子知礼氏は、2016年10月21日、東京ビッグサイトで10月19日から21日まで開催している「ITpro EXPO 2016」会場内で「IoTビジネスの実現と成功に向けて~『協創』がもたらすイノベーションとは?」と題して講演した。

ウフルの八子知礼氏
ウフルの八子知礼氏
(撮影:中村 宏、以下同じ)
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 講演の序盤で、八子氏は「IoTは『モノのインターネット化』と訳されることが多いが、モノにだけ注目していると、非常に小さなビジネスになってしまう。分析結果を業務プロセスや我々の生活にどうフィードバックするのか。すなわちモノとコトをつなぐことこそがIoTの本質だ」と同社の考えるIoTを説明。現在、そこまでできているIoTビジネスはほとんどないという。

 また最近は、クラウドに全てのデータを上げるのではなく、端末側でデータを素早く分析する必要性も増している。そのために必要なモバイル、クラウド、ソーシャルなどの技術は2010年以降に登場しており、それ以前に作られたシステムではIoTを実現できていない。

 続いて同氏は、日本企業のIoTが抱えている課題について解説した。日本では、「儲かるビジネスモデルが分からない」「先行事例がない」といった理由でIoTビジネスに踏み込めない企業が多い。これは、従来の基幹システムの作り方と、IoTシステムの作り方が全く異なるからだ。

 このため、部門別にコンセプト検証(POC)をしているという事例は多いものの、そこから事業計画の立案までできている企業は非常に少ないという。先に進めるには、旧来のウォーターフォールモデルでなく、ビジネスモデルと技術アーキテクチャーを同時に検討する「アジャイル型」の開発モデルの方が適している。しかし、八子氏は「それを1社でできますか、短期間でできますか、リソースはありますか」と語りかけ、協業の必要性を示唆した。

会場となった展示会場内アリーナの様子
会場となった展示会場内アリーナの様子
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 後半では、ウフルが掲げるIoT実現のための五つのコンセプト「DeCIDE」を解説した。日本のIoTビジネスで成果を上げるには、「早く意思決定して着手する」「他社との協業で大きな取り組みを目指す」「ビジネスモデルを確信する」「夢のあるおもてなしサービスを実現する」「競争力あるエコシステムを形成する」ことに注力すべきだと言う。その助けとなるように、同社は2016年5月末に「IoTパートナーコミュニティ」を発足。現在31社がメンバーとなり、「IoT×AI」「ヘルスケア」「スマートビルディング」など、七つのワーキンググループが活動中だという。