2016年10月19日から10月21日にかけて東京ビッグサイトで開催している「ITpro EXPO 2016」において、「体感できるFinTech革命 ~貯蓄から運用、資産管理まで、FinTechで変わる『あなたのお金』~」と題するパネル討論が実施された。パネリストとして、お金のデザイン取締役COO 北澤直氏、ネストエッグ代表取締役 田村栄仁氏、マネーツリー代表取締役CEO ポール・チャップマン氏が登壇。モデレーターは日経FinTech 岡部一詩が務めた。

スタートアップ企業が金融業界を変えた

 金融とITの掛け合わせによる新しいサービスを創出する「FinTech」。それによって従来は存在しなかった新しい金融サービスが次々と生まれている。そのメインプレーヤーは、銀行や保険会社など、従来の金融関連企業ではない。むしろ先進的なスタートアップ企業がFinTechを牽引してきた。

 お金のデザインの北澤氏は、冒頭でFinTech協会の参加企業が1年間で4倍に増えたことを紹介し、「短期間でFinTechをめぐる状況が大きく変わった」という実感を述べた。銀行や行政機関との話し合いでも、FinTechへの取り組みに対し積極的に協力してくれる姿勢が感じられるようになったという。

お金のデザイン取締役COO 北澤直氏
お金のデザイン取締役COO 北澤直氏
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 モデレーターの岡部は、「もともと銀行や保険の業界はITに対して多くの投資を行ってきた。FinTechはそれとは異なり、コンシューマー向けの金融サービスがメインであると感じている。その要因は何か」と問いかけた。

 北澤氏は、「従来の金業界におけるITは、自社が利用するためのシステム、あるいは大口投資家が利用するようなものだった。コンシューマーはその恩恵を受けていたわけではない。FinTechによって、金融サービスがコンシューマーにも利用できるように、敷居が下りてきた。それは通信技術が浸透し、Webを使えばコストをかけずにコンシューマー向けのサービスを提供できる状況が生まれたからだ」と状況を解説した。

 北澤氏がCOOを務めるお金のデザインでは、ロボアドバイザーサービス「THEO」など、従来プロの投資家が享受していた資産運用を任せるサービスをコンシューマー向けに提供している。

 その利用者は、20代から40代が約9割、半分以上が投資経験をほとんど持たない層だという。北澤氏は「これまで投資をためらっていた層が、FinTechによって手を出すようになった」とFinTechの効果を語る。

 貯金するためのアプリ「finbee」を開発中のネストエッグの田村氏は「finbeeは、銀行のシステムに対してAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)を利用してアクセスして使うサービス。金額を更新するAPIを利用するのはfinbeeが日本初。既存の金融事業者である銀行がスタートアップ企業にAPIを公開するなどかつては考えられないこと。FinTechに協力的になってきたことの象徴と感じている」と述べた。

ネストエッグ代表取締役 田村栄仁氏
ネストエッグ代表取締役 田村栄仁氏
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