2016年10月19日から21日にかけて東京ビッグサイトで開催している「ITpro EXPO 2016」において、「加速する第4次産業革命~日本企業はデジタル化の混沌を勝ち抜けるか」と題するパネル討論を行った。パネリストとして早稲田大学ビジネススクール教授 根来龍之氏、アクセンチュア執行役員 戦略コンサルティング本部 統括本部長 清水新氏、ITmediaエグゼクティブプロデューサーの浅井英二氏が登壇。モデレーターは日経BPイノベーションICT研究所長 桔梗原富夫が務めた。

デジタル変革の本質とは何か

 デジタル化社会に突入し、「Uber」や「Airbnb」のようなデジタル化を使ったサービスが次々と登場し、従来のビジネスを破壊するケースが現れてきた。桔梗原氏は、「デジタル化の本質とは何か。デジタル化がビジネスにもたらすインパクトは何か」と問いかけた。

日経BPイノベーションICT研究所長 桔梗原富夫
日経BPイノベーションICT研究所長 桔梗原富夫
(撮影:菊池 一郎、以下同じ)
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 アクセンチュアの清水氏は「デジタル化のキーはテクノロジー。利用者側はテクノロジーを使って賢くなっている。スマートフォンで、欲しいものを一番安く売っているところから買う。テクノロジーが顧客の行動を変えてしまった。一方でサプライヤー側では、素人がビジネスに乗り出せるようになり、新興企業が多く出現した」と状況を分析する。

 清水氏の話を受け、早稲田大学の根来氏は「デジタル化が進んでいる業界とそうでない業界がある。しかしビジネスのプロセスにおけるデジタル化は多くの産業で進んでいる」と答えた。

 ITmediaの浅井氏は「価値観の変化がデジタル化の本質。スマートフォンですぐに何でもできる環境が生まれ、価値観が変化し、経済の在り方も変わっていく」と指摘し、「デジタル化の先には、AI(人工知能)の急激な変化が来る。企業がAIを使うか否かの判断は非常に難しいだろう」と見解を述べた。

レイヤー構造によって、企業間競争の形が変わる

 続いて桔梗原氏は「デジタル化が進んだ社会では企業間の競争はどう変わるのか」と質問を変えた。

 根来氏は「まずはレイヤー構造を理解すべきだ」と指摘する。レイヤー構造とは、ビジネスをレイヤーに分けて組み合わせて利用することを意味する。

早稲田大学ビジネススクール教授 根来龍之氏
早稲田大学ビジネススクール教授 根来龍之氏
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 例えば駐車場アプリを作るベンダーは、地図情報はGoogle、クラウドのインフラはAmazon(Amazon Web Services)が使える。素人がビジネスを簡単に始められるといっても、バックヤードのレイヤーにはプロの技術が使えるからだ。

 「素人がビジネスに参入しやすくなったといっても、ゼロから全て用意しているわけではない。プロが作った地図やインフラを活用することで、プロと戦える時代が来た。それはデジタル化によってレイヤー構造ができた恩恵だ」と、従来とは違う企業間競争が起こっていることを指摘する。

浅井氏は、「デジタル化が進めば自然にレイヤー化が進む。そしてエコシステムが出来上がる。よそのテクノロジーをレイヤーで利用できるからこそ、自分の得意分野で戦える」と根来氏の意見に同調する。

ITmediaエグゼクティブプロデューサー 浅井英二氏
ITmediaエグゼクティブプロデューサー 浅井英二氏
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