これまで、IT部門もマーケティング部門も専門性を発揮して事業に貢献してきた。これからはそれぞれの知見を掛け合わせたモデルを創らないと、競合他社や海外企業に太刀打ちできない──。

 2016年10月19日から21日にかけて東京ビッグサイトで開催している「ITpro EXPO 2016」のメインシアターで、ITproマーケティングの松本 敏明プロデューサーは、「ITエンジニアが知っておくべき『デジタルマーケティング最前線』」というテーマで講演した。

ITproマーケティングの松本 敏明プロデューサー
ITproマーケティングの松本 敏明プロデューサー
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 まず松本プロデューサーは、マーケティングオートメーション(MA)市場が2020年までに2.5倍の規模で伸びるという調査結果を引きながら、大手企業を中心にMAが本格的な検討から導入のステージに入っていると指摘した。さらに、海外のマルケトやハブスポットといったMAの専業ベンダーだけではなく、セールスフォース・ドットコムやオラクル、IBM、アドビ システムズなどITエンジニアになじみのある会社が日本でMAツールを提供しており、シャノンやシナジー・マーケティングといった国内ベンダーと競い合っている構図を解説。IT技術者からそう遠くないところで、マーケティング部門を支援するビジネスが活性化している現状を紹介した。

 特に松本プロデューサーが指摘したのは、「B2B企業向けのリード(見込み客)管理」がデジタルの力を取り入れていること。SFA(営業管理システム)の前工程として、展示会やセミナーなどのオフラインのチャネルと、Webサイトやメールマガジン、ホワイトペーパーダウンロードなどオンラインのチャネルを組み合わせて、製品やサービスに興味を持っている見込み客を、ITの力で発掘する動きが急速に進んでいるとした。

 ここで重要になるのが「『IT部門』と『マーケティング部門』の連携である」と松本プロデューサーはいう。マーケティング部門はほとんどの場合、デジタルの知識が弱いため、例えばMAを導入しようにもテクノロジー情報の収集だけでいっぱいとなり、ソリューションを選択する基準が分からず、導入後も期待した結果を得られないという結果に陥りがちだという。

 これに対して、IT部門はコストを重視しリスク回避でものを考えるというマインドがある。しかもマーケティング部門の目指す目標や抱える課題の重要性を理解できず、テクノロジーの観点だけでの助言にとどまってしまうという。

講演の様子
講演の様子
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 両部門には、マインドセットやスピードなどに大きな溝があるのも事実。松本プロデューサーはこの溝を早急に埋める取り組みが必要とした(関連記事:「デジタルマーケティングの実現へ、IT部門はマーケ部門を理解しよう」)。

 既に米国では、「MarTech」という言葉が広がって、顧客に向かう「マーケティング」の視点と、技術を活用する「テクノロジー」の視点を融合させる考え方が定着しているという。松本プロデューサーは、今年春に米国で開催されたイベントでユーザーエクスペリエンスを向上するためのアジャイル開発について、マーケティング部門が解説したことなどを紹介(関連記事:「マーケティング現場へのアジャイル適用が話題に、「データドリブン」が未来を開く」)。米国では両部門の融合が形になって見え始めていると指摘した。

 デジタル技術の進展により、「顧客の属性や行動パターンをデータ化し、ここで得られる知見や仮説を基にして、自分の会社との良好な関係性を創り、利益に結び付ける動きは今後も進む」(松本プロデューサー)。だとすると、この動きを実装する役割を担うIT技術者に対するニーズは高まる。「ぜひMarTechに乗り出して、あなたの会社の利益に貢献し、あなた自身も成長してほしい」と松本プロデューサーは締めくくった。