米Appleが進めている自動車開発計画はここに来て岐路に立たされていると、複数の海外メディア(米AppleInsider米CNETなど)が現地時間2016年10月17日までに米Bloombergの報道を引用して伝えた。

 それによると、Appleが社内で「Titan」と呼ぶEV(電気自動車)開発プロジェクトは、その当面の目標をEVそのものの開発ではなく、自律走行システムの開発へと切り替えた。Appleの幹部はTitanチームに対し、2017年の年末ごろという期限を設け、自律走行システムの実現可能性を証明するよう指示した。そのうえで、Appleがその後自社でEVを開発するのか、自律走行システムを自動車メーカーに提供する事業を進めるのか、いずれかを決定するよう求めたという。

 同社のTitanプロジェクトを巡っては、リーダーシップの流動や、戦略上の意見の相違、サプライチェーン関連の問題などがあり、現在は当初の計画とは異なる様相を呈しているとBloombergは伝えている。

 Titanプロジェクトが始まったのは2014年。当初は2020年までにEVの生産を始めるという計画だったが、2015年の終わりごろから方向性を巡ってマネージャー間で意見の相違が生じたという。当初プロジェクトを率いていた、元米Ford Motorのエンジニアで、AppleでiPodやiPhoneの開発に携わったSteve Zadesky氏は2016年初頭にその役職を退いた。またAppleのベテランマネージャーで、ソフトウエアチームを率いていたJohn WrightもTitanプロジェクトから離れた。

 そうした中、今年7月、かつてハードウエアエンジニアリング部門を率いていたBob Mansfield氏がTitanの責任者に就任し、自律走行技術の開発に注力するという方向性を打ち出した。その後カナダBlackBerryで自動車向けソフトウエア部門を率いていたDan Dodge氏もプロジェクトに加わった(関連記事:Appleの自動車プロジェクト、自律走行技術の開発に注力)。

 しかし今回のBloombergの報道によると、その後の8月と9月に数多くのエンジニアがプロジェクトを去った。すでに自動車用OSやその試験工程に携わっていた約120人のソフトウエアエンジニア、車体/サスペンション開発などを担当していた数百人のハードウエアエンジニアが去ったという(関連記事:Apple、自動車開発の計画見直しか 人員を数十人削減)。

 ただ、Titanプロジェクトは自律走行システムの開発という目標に向けて新たな人材を雇い入れており、チーム全体の人員数は以前の水準を保っているとBloombergは伝えている。