ガートナー ジャパンは2016年10月5日~7日までの3日間、東京・品川で企業のCIOに向けたIT専門イベント「Gartner Symposium/ITxpo 2016」を開催した。7日には、米ガートナー リサーチ部門 バイスプレジデント兼フェローのハン・ルホン氏が「基調講演・続編2 プラットフォームの世界で競争する」と題する講演を実施、IoT(インターネット・オブ・ザ・シングス)とともに広がるプラットフォームの世界で、企業がいかにビジネスを展開すべきかについて語った。

米ガートナー リサーチ部門バイスプレジデント兼フェローのハン・ルホン氏
米ガートナー リサーチ部門バイスプレジデント兼フェローのハン・ルホン氏
(撮影:中尾 真二、以下同じ)
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 「IoTやデジタル化が進む現在、多くの企業が自社の製品をインターネットに接続し、コネクテッド製品としようとしている。照明であればスイッチや明るさをスマートフォンから制御できるように、といった具合だ」と、ルホン氏は指摘。家電、自動車から医療や金融といったサービスまで、デジタル化、コネクテッド化の競争が始まっているという。

 ルホン氏は、ここに新たなビジネスモデル、競争相手が生まれているとみる。「企業は、これまで自社製品をデジタル化し、それをインターネットにつなぎ、スマートフォンなどのデバイスに機能やサービスを提供するAPIプラットフォームを利用すればよかった。ユーザーはこのエコシステム上で自社のアプリを使っていたが、ここにアマゾン、グーグル、アップルといった“デジタル・ジャイアント”が参入してきている」(同氏)のだ。

デジタル・ジャイアントがもたらす変化

 さらに、デジタル・ジャイアントが市場にもたらした変化について言及。アマゾンは音声認識機能付きデバイス「Amazon Echo」とAIエージェント「Alexa」によって、「消費者との最終的な窓口を押さえようとしている」(同氏)。

 消費者はメーカーや販売店のアプリやサイトではなく、Echoを経由してAlexaに「洗剤がない」というだけで、商品を注文できるようになる。アップルも、最新のアップデートで「Siri」のAPIを開放しサードパーティが音声認識エージェントを利用できるようにした。ルホン氏によれば、「クローズドマーケットで知られるアップルがこのような方針を打ち出したのは、EchoとAlexaの成功に触発されたからだ」という。

 消費者にとってはAlexa、Siri、そして「Cortana」と会話するだけで新しい体験やサービスが得られる。ただ、消費財を販売する企業などにとっては末端のチャネルやデータをデジタル・ジャイアントに押さえられた状態でもある。