東京電力ホールディングスは2016年10月12日、技術開発を担う経営技術戦略研究所について報道関係者向けに説明会を開いた。画像認識技術やロボットなどを積極的に活用して、電力設備の点検作業などの生産性を向上させる考えを明らかにした。

 東京電力ホールディングスグループは4月1日付でホールディングカンパニー制を導入し、燃料・火力発電事業、一般送配電事業、小売電気事業の三つに分社化している。経営技術戦略研究所はこれらの再編に先んじて2015年4月1日付で設置された組織だ。

 「電力設備を支える中核技術は自社で開発して競争力を高める」。東京電力ホールディングス 常務執行役 経営技術戦略研究所長の岡本浩氏はこう話した。例えば、発電所の設備や電源などは、専門の研究者が中心となって研究開発を進める。

東京電力ホールディングス 常務執行役 経営技術戦略研究所長の岡本浩氏
東京電力ホールディングス 常務執行役 経営技術戦略研究所長の岡本浩氏
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 一方、「IoT(インターネット・オブ・シングズ)のセンサーや画像認識技術などは、他社の提供するものを積極的に取り込んでいきたい」(岡本氏)とする。これらの技術は、設備の保守点検などに活躍が期待されているという。

 例えば、送電設備や変電設備の点検作業である。専用のカメラで撮影した画像を分析して、劣化状況を判定するシステムを開発している。これまでは作業員が目視で点検していた。経営技術戦略研究所 技術開発部送変電技術グループマネージャーの濱田浩氏は「画像認識技術を活用すれば、点検の手間を削減できる」とする。5~6日必要だった鉄塔の点検作業を1~2日に短縮でき、点検できる鉄塔の数も2倍になるという。

 岡本氏は「ロボットや画像認識などの技術を使って、生産性を2倍に高めたい」と説明。将来は、電力設備の運用などの業務に必要な人員を半減する考えだ。

 東京電力ホールディングスグループ全体の研究開発予算は約200億円。そのうち「経営技術戦略研究所の予算は約100億円」(岡本氏)。研究所の機能は大きく三つで、事業環境の予測などの「シンクタンク」、ソリューション提供などの「エンジニアリング」、イノベーションにつながるような「技術開発」となっている。