富士通は2016年10月5日、マニラ(フィリピン)で、「富士通アジアカンファレンス2016マニラ」を開催した。アジア地域で順次展開している一連のカンファレンスで、「Human Centric Innovation - Driving Digital Transformation」という統一テーマに基づいた講演を行った。会場では、200人を超える来場者が「ともにデジタル革新を加速させていこう」という富士通のメッセージに耳を傾けた。

写真1●富士通の小野弘之執行役員専務(Asiaリージョン担当)営業部門長
写真1●富士通の小野弘之執行役員専務(Asiaリージョン担当)営業部門長

 カンファレンスでは、まず最初に富士通の執行役員専務でAsiaリージョン担当の小野弘之営業部門長が登壇し、アジア市場の重要性を強調(写真1)。フィリピンの顧客やパートナーに向けて、「デジタルトランスフォーメーションの推進に、ともに取り組んでいきたい」と話した。続けて、小野専務に招かれて富士通フィリピン社長のラウル・サンチャゴ氏が壇上に立った(写真2)。同氏は、2015年にローカルのクラウドプラットフォームの運用を始めたことなど、フィリピンにおける富士通の活動を紹介しつつ、先導役として同カンファレンスの講演内容を案内した。

写真2●富士通フィリピンのラウル・サンチャゴ社長
写真2●富士通フィリピンのラウル・サンチャゴ社長

 オープニングスピーチに続けて、米フロスト・アンド・サリバンのAPAC ICTプラクティス、シニアバイスプレジデントであるアンドリュー・ミルロイ氏が「2017年のIT予測」と題してスピーチ。さらに基調講演に、富士通の高重吉邦マーケティング戦略室長が登壇した。

「IoTが広がり、データこそが新たな“ゴールド“に」

 ミルロイ氏はまず、2017年のITの方向性を示す5つのキーワードを示した(写真3)。(1)デジタル技術による破壊(Disruption)と変革(Transformation)、(2)クラウドコンピューティングの台頭、(3)あらゆるものがつながっていくIoT(Internet of Things)、(4)すべての企業がビッグデータ企業になる、(5)データこそが新たな“ゴールド”になる――というものだ。

写真3●フロスト・アンド・サリバンAPAC ICTプラクティスのアンドリュー・ミルロイ・シニアバイスプレジデント
写真3●フロスト・アンド・サリバンAPAC ICTプラクティスのアンドリュー・ミルロイ・シニアバイスプレジデント

 デジタル技術による破壊者としては、米ウーバー・テクノロジーズや米Airbnbが著名だが、フィリピンにも破壊者となる企業があるとしてOLX、ZipMatch、xurpasなどを紹介。またデジタル変革の成功例として米ゼネラル・エレクトリック(GE)を挙げ、同社が業界向けのクラウドプラットフォームを提供する“デジタル・インダストリアル・カンパニー”に転身しようとしていること、同社がソフトウエア事業を2020年までに150億ドル規模にまで成長させるつもりであることなどを説明した。

 クラウドについては、フィリピンにおける市場が、2020年には2016年の約2.5倍に当たる5億5000万ドル規模に拡大すると予測。この背景として同氏は、IoTの浸透を挙げる。人工知能が様々な場面で利用されることで、人、モノ、そしてアプリケーションがつながっていくとする。またクラウドの使い方も単なる情報システムでの利用の枠を越え、2017年は保守など運用技術(OT)に関するデータのクラウド利用が進むとした。それを後押しするのが拡張現実(AR)のようなインタフェースの進展である。

 ミルロイ氏は、ヘルスケアなどの分野でのデータ活用例を示しながら、IoTで蓄積されたデータが企業にとって新たな金脈になると主張。最後に、そのために考慮すべき点を提示した。具体的には、ITとOTの進歩が自社にどのような変革をもたらすか、変革とイノベーションをもたらすためにIoTとクラウドをどのように活用するか、“サイバーレジリエント”になるためにデータをいかに守るか、といったことである。

強まるデジタル化の波を「ヒューマンセントリック」で乗り越える

 高重マーケティング戦略室長は「Human Centric Innovation -- Driving Digital Transformation」と題し、富士通のビジョンやソリューション、そして同社が顧客と取り組んできたデジタル変革の先進事例について話した(写真4)。「世界のさまざまな業界で市場シェア上位を占める20社のうち、3分の1は2018年までに破壊に直面する」という米IDCの調査結果を挙げつつ、それを乗り越えるためには、人の力を強めてイノベーションを起こすこと(Human Centric Innovation)で、デジタル革新を進めていくことが最善の方法だとした。

写真4●基調講演に登壇した富士通の高重吉邦マーケティング戦略室長
写真4●基調講演に登壇した富士通の高重吉邦マーケティング戦略室長

 デジタル変革に関しては、具体例として、ファッション小売りや、製造業(オムロン)、東京証券取引所などを紹介。デジタル化によって、顧客に新しい体験をもたらすことができること、業務を効率化できることなど、ビジネスモデルを変革できることを示した。