写真●Preferred Networks CTOの久保田展行氏
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 深層学習スタートアップ企業のPreferred Networks(PFN)は2016年10月5日、ネットワークのエッジでの利用を想定した深層学習プラットフォーム「Deep Intelligence in-Motion」(DIMo、ダイモ)のベータ版提供を同年12月中旬から始めると発表した。「コンピュータビジョン(人・物体検出)」「異常検知」の各アルゴリズムを組み込んだパッケージに加え、クラウドの管理コンソールを提供する。

 PFNはこのベータ版を、出資元であるトヨタ自動車やファナックとは業種が異なる5~6社に提供する考えで、これから提供企業の募集を始める。2017年4月に正式版を発売する。「防犯カメラの解析のほか、タービンなど『動くもの、回るもの』なら解析対象になる」(Preferred Networks CTOの久保田展行氏)。

 DIMoは、エッジサーバーやルーターなどネットワークの端(エッジ)での動作を想定した深層学習(ディープラーニング:多層ニューラルネットによる機械学習)ソフトウエア群のこと。

図●DIMoの概要
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 DIMoは、同社が開発した深層学習フレームワーク「Chainer」のほか、ストリームデータ向けETL(受理・変換・送出)ツール「SensorBee」を含む。クラウド上のプラットフォームと比べ、低レイテンシ、クラウドへのデータ大量伝送が不要といった利点がある。

 同社はChainer、SensorBeeをオープンソースソフト(OSS)として公開済み。2017年4月に公開するDIMo正式版では、これらのソフトを含めてサブスクリプション形式で有償提供する考えだ。

 DIMoのアルゴリズムパッケージは、ベータ版で提供する「コンピュータビジョン」「異常検知」のほか、近日中に「電力需要予測」を追加する考え。データ可視化などアプリケーション層は提供せず、Tableauなど別のソフトウエアと組み合わせることを想定する。

 このほかPFNは、Chainerの機能をWebブラウザー上で試せる「Chainer Playground」を2016年11月初旬に無償公開することを明らかにした。日本語・英語版のチュートリアルとChainerの実行環境をセットにしたもので、ChainerやPythonのインストールをしなくても基本機能を利用できる。オープンデータセットを使い、GPU上で学習の実験もできる。

 加えてPFNは、医療への深層学習の応用として、東京大学産業連携プラザに「PFNがん研究所(PCRI:PFN Cancer Research Institute)」を設立したことを公表した。PFNの一部門として、当初は5~6人が在籍。次世代シーケンサなどの実験設備を導入し、バイオテクノロジーと人工知能の融合領域の研究と産業化を進める。将来は、新規のがん診断法の確立、ゲノム分析によるがん治療方針の決定、個別化創薬の実現につなげる考えだ。