ワイヤレスゲートとLTE-Xで代表取締役CEOを務める池田武弘氏
ワイヤレスゲートとLTE-Xで代表取締役CEOを務める池田武弘氏
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 公衆無線LANサービスやモバイル通信サービスを手がけるワイヤレスゲートは2016年10月3日、投資会社のモバイル・インターネットキャピタルと組んで、IoT(インターネット・オブ・シングズ)向けに高速大容量でセキュアな通信サービスを提供する新会社、LTE-Xを2016年9月20日付けで設立したと発表した。2017年4月に商用サービスを開始する予定。

 LTE-Xは公衆無線LANの広帯域とLTEのセキュリティを兼ね備えた通信サービスを、通信事業者のLTE通信サービスよりも安価にIoT向けに提供するとしている。ワイヤレスゲートとLTE-Xで代表取締役CEO(最高経営責任者)を務める池田武弘氏は同日開いた事業説明会で、「従来のIoT向け通信サービスは安価だが狭帯域だった。LTE-Xは差異化を図り、安価で広帯域なサービスを提供する」と話した。監視カメラやデジタルサイネージなどの転送データ量が多い用途に向くという。

無線LANの広帯域とLTEのセキュリティを両立させた
無線LANの広帯域とLTEのセキュリティを両立させた
(出所:ワイヤレスゲート)
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レイヤー2ネットワーク上でLTEトンネルを張る
レイヤー2ネットワーク上でLTEトンネルを張る
(出所:ワイヤレスゲート)
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 安価と広帯域を両立させるための要素技術として、無線LANなどのレイヤー2ネットワーク上でLTEを使えるようにするソフトウエア技術「LTE over Wi-Fi」を利用する。米エヌコア・コミュニケーションズが開発した同ソフトをIoTデバイスと無線LANアクセスポイントに導入することによって、LTE接続の一部を無線LANに置き換える仕組み。通信事業者のLTE基地局を使わずに済むため、LTEの通信料金を大幅に下げられるとしている。

 池田氏は通信コストの例に監視カメラを挙げる。3Mビット/秒で24時間監視した場合、大手通信事業者のモバイル通信サービス(LTE)を使った場合、月額95万円ほどになるという。LTE-Xのサービスでは、この10分の1の料金を目指す。IoTデバイス側にLTE通信モデムを実装する必要がないので、デバイスのコストも抑えられるという。

 足回りの一部が無線LANになるだけで、LTEで通信していることに変わりはないため、LTEゲートウエイとの間のセキュアな接続や、SIMモジュールを用いたデバイス認証など、LTEが備えるセキュリティ機能をそのまま利用できる。「通常の無線LAN接続の場合、監視カメラ映像をインターネットに公開していた事案などに見られるように、セキュリティ面で不安がある。LTE over Wi-FiならLTEと同様のセキュリティを得られる」(池田氏)。

 LTE-Xの資本構成は、ワイヤレスゲートが51%でモバイル・インターネットキャピタルが49%である。現在の資本金は200万円だが、段階的に増資して最終的に2億5000万円の資本金とする考え。当面は池田氏が社長を務めるが、将来的に社長を公募するという。

 LTE-Xは今後、2017年4月の商用サービス開始に向けて具体的なサービス内容を詰める。IoTデバイスの管理機能や、LTE over Wi-Fiを組み込んだ無線LANアクセスポイントの管理機能などを作っていく。パートナー連携の例としては「Azure IoT SuiteとIBM Watson IoTがLTE-XのIoT通信サービスの採用を決めている」(池田氏)という。

LTE-Xの事業説明会の様子
LTE-Xの事業説明会の様子
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