日本通信は2016年9月29日、携帯電話網の相互接続をソフトバンクと協議していたが、接続を拒否されたとして、「接続協定に関する命令申立書」を総務省に提出したと発表した。一方のソフトバンクは「接続を拒否した事実はなく、現在も協議中と認識している」とコメント。これを受け、日本通信は9月30日に電話会議の形式で記者向けの説明会を開き、問題の経緯を明らかにした。

 日本通信によると、ソフトバンクに携帯電話網の相互接続(レイヤー2接続)を申請したのは2015年8月7日。以降、実現に向けて協議を重ねてきたが、「(日本通信が)協定書にサインする段階で(ソフトバンクが販売した)iPhoneやiPadに接続できないという制約を持ち出してきた」(三田聖二会長)という。

 上記の「iPhoneやiPadに接続できない」という発言は、SIMロック解除が義務化される以前に発売された端末を意味している。2015年5月以降に新たに発売された端末であれば、購入日から180日経過後にSIMロックを解除でき、ソフトバンクが販売したiPhoneやiPadと組み合わせて利用できる。iPhoneやiPadに限らず、Android端末も同様である。

 日本通信が問題視しているのは、ソフトバンク網を利用するにもかかわらず、ソフトバンクの既存端末を流用できない点である。NTTドコモの回線を活用したサービスの場合、SIMロック解除に関係なく、NTTドコモ端末を流用できる。「我々はNTTドコモと同じような接続をソフトバンクに求めているだけにすぎない」(福田尚久社長)とする。

 さらに福田社長はこう続ける。「MVNO(仮想移動体通信事業者)のサービスでも役務提供者は同じ(貸し手である携帯電話事業者)なので、(端末を流用できるのは)当然のこと。相互接続では、網の先にある端末にアクセスできることが大前提。端末にアクセスできないというのは論理的に成り立たない」。結局、ソフトバンクと交渉してもビジネス上の都合とする回答にとどまり、協議が行き詰ってしまった。

 携帯電話大手3社は、MVNOとの接続義務を課されている。「MVNOに係る電気通信事業法及び電波法の適用関係に関するガイドライン」では、「電気通信役務の円滑な提供に支障が生じるおそれがある」場合などは接続を拒めるとしているが、「ビジネス上の都合というのは典型的な接続拒否事案」(福田社長)。そこで冒頭のような接続拒否を理由として、電気通信事業法第35条第1項に基づいた「接続協定に関する命令申立書」を総務省に提出した。

 このような経緯のため、ソフトバンクは接続を拒否したと認識しておらず、現在も協議中との回答になったとみられる。一方、行司役となる総務省は、「29日に日本通信から提出されたばかりで内容を精査している。事実を確認しながら対応を検討していく」(料金サービス課)とする。