このソフトウエアを利用する効能
このソフトウエアを利用する効能
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 NTTは2016年9月28日、ホワイトボックススイッチでMPLS(Multi-Protocol Label Switching)によるパケット転送を可能にするソフトウエアを開発したと発表した。ホワイトボックススイッチは、ホワイトボックスサーバーのようにユーザーがソフトウエアを自由に選べるオープンな仕様のスイッチ。従来はMPLSを利用しようとすると、通信機器ベンダーが提供する高価なWAN向け専用装置が必要だった。このソフトウエアを利用すると高価な機器が不要になり、MPLSの利用が進む可能性がある。

 通信機器ベンダーがこのソフトウエアを採用することで、従来はデータセンターでの利用が中心だったホワイトボックススイッチが、通信事業者のネットワークにも使えるようになる。また、通信事業者自身がこのソフトウエアを利用して柔軟にネットワークを構築するといったケースも想定しているという。

 MPLSは、パケットにラベルを付与することで、物理的なネットワークを複数の仮想ネットワーク(スライス)に分割する技術。VLANがLANのスライス分割によく使われるのに対して、MPLSは主にWANのスライス分割に利用される。NTTによると、従来はMPLSを処理するソフトウエアは仮想スイッチ(ソフトウエアスイッチ)しかなかったという。仮想スイッチはデータ転送をソフトウエアで行うため、通信速度に限界があった。発表したソフトウエアはデータ転送にホワイトボックススイッチのハードウエアを使うため、高性能なホワイトボックススイッチを使えば、T(テラ)ビット/秒レベルの高速な通信が可能だという。

 このソフトウエアは、他のMPLSスイッチとの間でネットワークの経路情報を交換して最適な経路を生成する技術と、生成した経路をハードウエアに書き込む技術からなる。MPLSの経路生成機能は、オープンソースのルーティングソフトウエア「Quagga」を改良して実現した。経路情報の書き込みにはSDN(Software-Defined Networking)でよく使われる「OpenFlow」を利用している。

 NTTが2015年に発表した「NetroSphere(ネトロスフィア)構想」の要素技術である「MSF(マルチサービスファブリック)」が目指す「汎用化・部品化されたネットワーク」の一環として開発した。高機能な専用機器ではなく、機能がシンプルな汎用製品を利用できるようにする取り組みだ。