電通は2016年9月23日、電通や国内グループ会社のデジタル広告サービスで不適切業務が判明したとして都内で会見を行った。中本祥一副社長は「人為的なミスも含めて、責任は特定個人というよりも業務を統括する我々を含めた経営の問題」と述べた。(関連記事へ

 会見冒頭で中本副社長は「広告主をはじめ関係各位にご迷惑とご心配をおかけしたことをお詫びする」と述べた。また、ミスの発生を牽制、発見する管理体制について「不十分であることは疑いの余地がない」と釈明した。

 中本副社長によると、電通は8月初旬にデジタル広告の不適切業務を把握した。8月15日に中本副社長を委員長として、外部の弁護士やコンサルタントを含めた計5人の社内調査チームが発足した。

 社内調査は、不適切業務の実態把握を目的に、関連業務に従事する社員や契約社員や書類の照合・突き合わせのほか、不適切業務が発生した原因の究明を進めているという。年内をめどに調査を完了した時点で、改めて会見を行うという。

 不適切業務が発覚した発端は、2016年7月に広告主から「掲出がされているはずの期間に掲出されていないのではないか」という指摘である。問い合わせに対応して社内調査を進めるうち、その広告主以外にも不適切なものが複数あることが判明したという。

 会見に同席した榑谷典洋デジタルプラットフォームセンター局長によると、不適切業務があったのは、インターネットのバナーや検索連動型、動画広告などの、いわゆる行動ターゲティング広告()。掲載する広告枠やWeb閲覧者の属性、時間帯などに応じて電通グループが入札を代行しているが、広告の配信結果を伝える運用レポートの内容が、実際の配信結果と異なっていた。

図●行動ターゲティング広告
図●行動ターゲティング広告
(出所:電通)
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 例えば、100万円の予算で広告配信を1カ月間実施する広告主の依頼に対して、実際は広告配信の入札が順調で、計画よりも早く25日間で予算を使い終わったのを報告しないで、30日間配信したと報告していたり、逆に入札が順調に進まず数日間は広告が全く配信されていなかったのに、配信されていたと報告していた。また、本来は1万回の掲載(インプレッション)を保証した広告に対して、9900回でも1万回と報告していたという。

 山本敏博常務によると、関わったのは電通と、現在の国内グループ会社であるサイバー・コミュニケーションズ(CCI)、電通デジタル、DAサーチ&リンクの4社。レポート改竄に関与したのは複数人で、高度な判断をするコンサルタントや、その指示のもとで動くオペレータと呼ばれる立場という。

 ただ、現時点で判明しているのは最初から意図したものだったのではなく、ミスや力量不足、時間不足が原因で、結果として故意にレポートを改竄していたと説明。運用の設定を間違えるなど、ミスに気付かずに報告したもののも含まれるという。電通は不適切な業務に相当する約2億3000万円は全て返済する方針だ。

 そのうえで、「不適切であるかを未然に防ぐ機能が極めて不十分であることは明らかだ」(山本常務)として、9月初旬に広告主の発注内容や掲載、請求の確認業務を独立性の強い部署に移管し、デジタル広告分野の人材の増強を準備していると説明した。