アームは2016年9月21日、横浜市の本社で車載市場をターゲットとしたリアルタイムプロセッサ「Cortex-R」シリーズ新製品の技術説明会を開催した。説明会の冒頭、同社応用技術部シニアFAEマネージャーの中島理志氏は、「ARMの中でも最も安全性に特化したプロセッサ」と説明。続けて「車載機器や医療機器など高い安全性が求められる用途に向けた製品になる。後日、パートナー企業を通じて発売される」と述べた。

 Coretex-R52は、英ARMで初めてのARMv8対応で、従来のCortex-R5の上位製品にあたる。「機能安全の要求から生まれたプロセッサである。Cortex-Rファミリで、リアルタイムプロセッサの演算性能としては、最も高い演算効率を持つ」(中島氏)という。

アーム 応用技術部シニアFAEマネージャーの中島理志氏
アーム 応用技術部シニアFAEマネージャーの中島理志氏
(撮影:林 徹、以下同じ)
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自動投薬機や自動ブレーキのようなエラーが危険に直結する用途では、非常に高い機能安全性が求められる。標準規格としてはISO26262やIEC61508などがある(発表資料より)
自動投薬機や自動ブレーキのようなエラーが危険に直結する用途では、非常に高い機能安全性が求められる。標準規格としてはISO26262やIEC61508などがある(発表資料より)
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 車載、産業機器、医療分野のような分野では機能の安全が求められる一方で、駆動するソフトウエアの複雑化も指摘されている。このような状況で「複雑で高い安全性が求められるシステムの達成手段として、ソフトウエア統合の簡素化が求められている」(中島氏)という。

ハイパーバイザーと高速コンテキストスイッチによってアプリケーションを統合

 Cortex-R52では、従来の「特権モード」と「非特権モード」との間に「ハイパーバイザーモード」が設けられている。「これによって堅牢性や安全性をモニタリングし、安全性が求められるタスクと汎用タスクで別のOSを動かすことも可能になる」(中島氏)という。

 中島氏は「最近のクラスの高い車だと150個ほどのプロセッサを使用している」と述べ、これらの機能統合に有効であるという。

Cortex-R52はハイパーバイザーを備えることによって、OSを分離した実行環境が可能となる(発表資料より)
Cortex-R52はハイパーバイザーを備えることによって、OSを分離した実行環境が可能となる(発表資料より)
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Cortex-R52の機能安全のため、偶発的エラーとシステム的エラーに関して取り組んでいるという(発表資料より)
Cortex-R52の機能安全のため、偶発的エラーとシステム的エラーに関して取り組んでいるという(発表資料より)
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 ほかにもL2MPUやインターコネクトプロテクションの追加、エラーマネジメントの強化やコンテクストスイッチの高速化によって、Cortex-R5比で20~30%の速度向上を実現している。中島氏は「安全性を求めるアプリケーションに対応した標準的なプロセッサ」と語り、説明会を締めくくった。