FeliCa対応などで注目されるiPhone 7だが、主要家電量販店の実売データによると初動は厳しい情勢だ(9月16日、ソフトバンクのiPhone 7発売イベント)
FeliCa対応などで注目されるiPhone 7だが、主要家電量販店の実売データによると初動は厳しい情勢だ(9月16日、ソフトバンクのiPhone 7発売イベント)
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 米アップルが2016年9月16日に発売したスマートフォン(スマホ)新機種「iPhone 7」「同 Plus」の、主要家電量販店における発売後3日間の販売実績は、2015年9月発売の「iPhone 6s」「同 Plus」に比べ台数ベースで42%減にとどまった。ブラック系の新色へ需要が偏り品薄となっていることに加え、スマホ市場全体の低迷、割安なAndroid搭載スマホの台頭などが影響したとみられる。

 市場調査会社BCN(東京都千代田区)が、主要家電量販店における9月16日~18日の3日間の実売データを集計し、従来製品の発売後3日間のデータと比較した。アップルの直営店や「ドコモショップ」など通信各社の専売店の販売実績は含まれていない。

iPhone 7/7 Plusの、主要家電量販店における発売後3日間の販売実績(BCNの資料を基に日経情報ストラテジーが作成)
iPhone 7/7 Plusの、主要家電量販店における発売後3日間の販売実績(BCNの資料を基に日経情報ストラテジーが作成)

 販売台数を通信会社別にみると、NTTドコモが小幅ながらシェアを挽回している。同社は前回の21.1%から22.7%へと、シェアを1.6ポイント伸ばした。一方、KDDI(au)は37.5%から36.2%へと1.3ポイント後退。ソフトバンクは0.2ポイント減の41.1%とほぼ横ばいだった。

 機種別に構成比をみると、4.7型液晶ディスプレイを搭載したiPhone 7が97.1%、5.5型のiPhone 7 Plusが2.9%。大型の5.5型モデルの構成比は、2014年のiPhone 6 Plusで17.8%だったが、2015年のiPhone 6s Plusで10.9%に低下しており、今年はさらに大型モデルの構成比が下がっている。

 NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手通信3社は、9月16日にそれぞれ開催した発売イベントでiPhone 7/7 Plusの予約状況が過去最高であると表明している。一方で「ジェットブラックの人気が高く、iPhone 7 Plusのジェットブラックは、初期入荷分を予約だけで完売している。予約状況を色別にみると5~6割がジェットブラックになっている」(ソフトバンクの宮内謙社長)など、一部のモデル・色に人気が集中し供給が追いつかないことを示唆している。

 アップル自身も9月14日までに、iPhone 7 Plusの全色とiPhone 7のジェットブラックについて、初期出荷分が予約のみで売り切れたと複数の米メディアに対し明らかにしている。アップルの生産計画と市場ニーズとの間に乖離があったり、何らかの理由でアップルが計画通りの初期出荷台数を確保できなかったりしたことで、需給のミスマッチが起きた可能性が考えられる。

 一方でスマホ市場を巡っては、需要の一巡や総務省による端末の「実質0円」販売の見直し要請などを受け、アップルを含むメーカー各社が苦戦している。同期間のスマホ全体の販売台数は2015年9月のiPhone 6s/6s Plusの発売時に比べ25%減、2014年9月の「iPhone 6」「同 Plus」の発売時と比べると32.5%減となっており、落ち込みの激しさを示している。

 仮想移動体通信事業者(MVNO)回線と組み合わせて使う、割安なAndroid搭載スマホなどが台頭するなか、これまで圧倒的なシェアを誇っていたiPhoneも徐々に競争の渦に引き込まれている可能性も考えられる。BCNによると、発売後3日間のスマホ全体の販売台数に占めるiPhoneの新製品のシェアは、2014年のiPhone 6/6 Plusでは89.9%と圧倒的だったが、2015年のiPhone 6s/6s Plusでは86.5%、今回は77.4%と下落傾向にある。今回のiPhone 7/7 Plusでは、FeliCa対応を始めとする新機能への期待の声がある半面、外観が従来製品とほぼ同様であることや、イヤホン端子が廃止されたことへの懸念の声もある。

 MM総研(東京都港区)によると、2015年4月~2016年4月のスマホ国内出荷台数において、アップルは初の前年割れを記録した。日本国内ではこれまで、大手通信3社が競うようにiPhoneを割安価格で販売し続け、iPhoneが世界的にも高いシェアを獲得。ただ、それゆえ「前年超え」のハードルは年々高くなっている。そこへ来て市場全体が冷え込み、前年割れを余儀なくされたとみられる。その傾向が現在まで続き、最新のiPhone 7/7 Plusでも販売にブレーキが掛かっている可能性が考えられる。

 FeliCa対応や防水機構、デュアルカメラといった新たな特徴を多様なユーザーに向けて丁寧に訴求し、逆風が強まるなかでいかに買い換えを促せるかが、今後の売れ行きを占うポイントとなりそうだ。